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生命の起源、「RNAワールド仮説」が現実味 自己複製できる45塩基のRNA「QT45」発見 Science誌に掲載Innovative Tech

» 2026年02月25日 08時00分 公開

Innovative Tech:

2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2

 英ケンブリッジ大学などに所属する研究者らがScience誌に発表した論文「A small polymerase ribozyme that can synthesize itself and its complementary strand」は、たった45塩基の短いRNAが自己複製能力を持つことを実証した研究報告だ。

 生命が生まれるためには、自分自身のコピーを作ることが欠かせない。コピーを作れなければ、どんなに優れた分子もいずれ壊れて消えてしまうからだ。現在の生命では、DNAが遺伝情報を持ち、タンパク質(酵素)がDNAの複製を助けている。

 しかし、タンパク質を作るにはDNAの情報が必要で、DNAを複製するにはタンパク質が必要だ。では一体どちらが最初に生まれたのか。これはつまり、自己複製生命の起源における鶏と卵問題といえる。

 この問題を解決しうるのが、生命の起源に関する有力な仮説「RNAワールド仮説」だ。RNAは情報を保存する能力(DNAのような役割)と、化学反応を触媒する能力(タンパク質のような役割)の両方を一つの分子で兼ね備えている。つまり、最初はRNAだけで情報の記録と自分自身のコピー作業の両方をこなしていた時代があったのではないか。これがRNAワールド仮説だ。

RNA(左)とDNA(右)の比較図(Wikipdiaより引用

 しかしこの仮説には根本的な矛盾がある。これまでに人工的に作られたRNAを合成できるリボザイム(触媒として使われるRNA)「ポリメラーゼリボザイム」は150〜300塩基もの長さを持つ。これほど長く複雑なRNAは、自分自身をコピーするのが難しいうえ、生命誕生以前の化学反応で偶然生まれる可能性も極めて低い。

 原始地球で自然に生じるRNA鎖はせいぜい数十塩基と考えられている。複製能力を持つには大きくなければならないが、大きいと自然には生まれない。この板挟みがRNAワールド仮説の最大の弱点だった。つまり、数十塩基で自己複製できるリボザイムがあればRNAワールド仮説の矛盾を克服できるというわけだ。

 研究チームは今回、この矛盾を打破できる「QT45」というリボザイムを発見した。約1兆種類のランダムRNA配列から、氷の中での人工進化を経て発見されたQT45は、45塩基という短さが特徴だ。またRNA鋳型に沿って3塩基ずつの部品をつなぎ合わせ、新しいRNA鎖を合成する能力を持ち、その能力によって自己複製の基本ステップを実行できる。

QT45リボザイムの各塩基を変異させたときの活性や相互作用への影響を色で示した図

 QT45の特徴は、自己複製に必要な2つのステップを両方とも実行できることだ。第1のステップは、自分(プラス鎖)と鏡像のように塩基対を成す相補鎖(マイナス鎖)の合成。QT45は64種類全ての3塩基部品を含むランダムなプールの中から正しいものを選び取り、1塩基あたり94.1%の正確さで自身の相補鎖を作り上げることができる。

 第2のステップは、その相補鎖(マイナス鎖)を鋳型として、特定の3塩基部品と6塩基部品を使い、自分自身のコピー(プラス鎖)を合成できる。収率は約0.2%、反応には72日間かかっており、効率はまだ低いが、これほど小さなRNAでこうした活性が見られたこと自体が画期的だ。

Source and Image Credits: Edoardo Gianni et al. ,A small polymerase ribozyme that can synthesize itself and its complementary strand.Science0,eadt2760DOI:10.1126/science.adt2760



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