2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
英ヨーク・セント・ジョン大学などに所属する研究者らが発表した論文「High Trait Procrastination Predicts Increased Goal Anxiety Despite Invariance in Simulation of Goal Achievement」は、先延ばし癖(プロクラスティネーション)の背後にある心理的メカニズムに新知見が得られた研究報告だ。
研究チームは、英国の大学生111人を対象に、短期目標(1カ月以内)と長期目標(6カ月以上)をそれぞれ挙げさせた。そして、目標に対する行動回避の可能性、達成できた場面をどれくらい鮮明に想像できるか、失敗を想像した際の予期不安など、さまざまな属性について評価を行った。
分析の結果、予想通り、先延ばし傾向が高い人ほど、短期的・長期的を問わず、目標に向けた行動を意図的に回避する可能性が高いと自己評価していることが確認された。
しかし、目標達成の場面を想像する際の鮮明さについては、先延ばし傾向による差は一切見られなかった。つまり、先延ばし癖のある人も、そうでない人と同じくらい詳細かつ鮮明に、自分が成功する未来を思い描くことができていた。さらに、目標の重要性や、達成した際に得られるであろう幸福感への期待値においても、両者の間に違いはなかった。
その一方で、先延ばし傾向の高い人は、目標達成に失敗する状況を考えた際に、より強い不安を感じることが判明した。この不安の増幅は、長期目標よりも短期目標において顕著だった。短期的な目標は、長期的目標と比べて客観的な重要度は低いと認識されているにもかかわらず、感情的な面ではより大きな脅威として立ちはだかっていることが示唆された。
これらの結果からは、先延ばし癖のある人は、適切な目標を設定する能力や成功を思い描く能力が欠如しているわけではないことが分かる。先延ばし癖のある人は、他の人と同じように目標を重要視し、成功を鮮明に夢見ている。しかし、成功確率を低く見積もり、特に目先の目標に対して失敗するのではないかという強い不安を抱きやすいため、それが結果として先延ばしを引き起こしている可能性がある。
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