それでも通販サイトで不動産を販売しづらいのは、細かい障壁が次々に立ちはだかるからだ。例えば、不動産の売買契約を結べても、顧客が対面で重要事項を説明することを求めれば、オンラインでは実施できない。対面でもオンラインでも説明できる仕組みを整えなければならないからコストがかかりやすくなる。
不動産取引に付き物の銀行借り入れも高いハードルだ。家や土地は高額なだけに自己資金だけで購入する人は少ない。銀行からお金を借りる際には、通帳やマイナンバーカードなどの書類を提出したり、融資の審査があったり、担当者と面談したりといった多くの段階を踏む必要がある。不動産経済研究所(東京・新宿)が発表した25年の東京23区の新築分譲マンション平均価格は1億3613万円。高額な取引なだけに、買い手である顧客が「『ワンクリック』で購入するのではなく、時間をかけて考えたい」というケースも多い。
こうした多くのハードルを乗り越えて、顧客と業者がようやく決済までたどり着くとする。しかし、決済後には登記という壁が残る。登記では、司法書士による顧客の本人確認が必要だ。オンラインでも可能ではあるが、事前に免許証やマイナンバーなどの書類を送ってもらわねばならない。権利書やカギは郵送できるものの、非常に重要なモノだけに、顧客も事業者も「きちんと手元に渡るのか」と心配するハメになりやすい。販売拡大に向けた広告にも新築と中古住宅で表示規制が違うなど細かい決まりが多い。結果として、両者ともにネットでの売買のリスクがメリットを上回りやすいというわけだ。
不動産のネット購入に関わる多くの規制は一見、不便にも思える。だがそれらは買い手である個人や法人を守るためのものであるだけに、過度の規制緩和は諸刃の剣だ。このため米国など海外でも不動産取引の規制は日本と同様に厳しい。
日本では、ごく一部の不動産の専門業者のサイトでは、ネットを通じてマンションや住宅を売買できる。しかし、不動産の専門業者でない大手通販サイトにとっては、今のところ費用対効果が合いづらいのも事実。将来、技術革新が進み、不動産のネット販売のリスクとメリットの差が埋まり、互いのコストが下がった時には、一般の通販サイトを通じて、ワンクリックで土地や住宅が買える世の中が実現するのかもしれない。
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