トークンと人、どちらにいくら配るのか。その判断を誰が握るのか。取材した各社の動きには、ひとつの共通点があった。人事のトップが、AIのコストと活用を併せて見る体制へ移りつつあることだ。
Sansanは大間氏がCHROとしてCAXOを兼務する。メルカリは木村氏がCHROとCAIOを兼務する。freeeも7月の新体制に向け、同じ方向で検討を進める。横路氏は「プロダクト以外の全社AI推進と、人事は切っても切り離せない」と話し、「CAXO(AI活用責任者)とCHROがすごく近しいほうがいい」とSansanの体制に近い考えを示す。
なぜ情報システム部門ではなく人事なのか。AIのコスト管理は、評価や採用、組織設計と切り離せなくなったからだ。Sansanの大間氏も「AI活用推進はIT部門のミッションとして扱われがちだが、AIカンパニーとしての組織カルチャーをどう作るかを定義することこそ本質で、そこは人事の仕事だ」と話す。メルカリの木村氏は、経営がまず変わり、次に人事が変わる、という順番を重視する。AIを理解した人間が組織設計と評価制度を握れば、現場への落とし込みが速くなるとみる。
評価の中身も動いている。メルカリは自動運転になぞらえ、AIにどこまで任せて働けるかをレベルで測る。Sansanは「AIを使ったかどうか」ではなく「AIを使って成果の質が変わったかどうか」で見る。共通するのは、トークン使用量のような単純な指標では人を測れない、という点だ。
ただし、この「人事トップがAIを見る」という構図に、LayerXの石黒氏は別の角度から留保をつける。同社ではCEOの福島氏ら、AIの専門家である経営トップが指針を出す。資本をどこに投じるかは、人事でも技術でもなく経営の問題だ、という立場である。
「ボトムアップでトークンのコストが足りないから2倍にしてください、これは通らない」と石黒氏。1億円の予算を2億円にする判断を下せるのは、CEOやCxO層しかいない。誰が人事を見るかではなく、経営が解像度を持ってAI投資を決められるかどうか。そこが重要な論点という。
整理すると、各社の体制はまだ固まっていない。人事が前に出る企業もあれば、経営トップが握ると見る企業もある。だが方向は似通っていて、トークンの予算を、人材の予算と同じ重さで決める主体が要る、という点だ。
その主体が予算を統合したとき、人とAIは初めて同じ土俵で比べられる。採用を1人分増やすか、トークンに回すか。その判断が日常になったとき、Sansanが先取りした「採らない」という選択は、特殊な事例ではなくなるだろう。
トークンの値段が決算に効き始める前に、人とAIをどう配るかの基準を持てるか。各社が別建てにしている2つの予算を、いつ、どんな物差しで1つにするのか。次に問われるのはそこになるだろう。
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