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ダウンロード違法化、補償金問題…… ネットと著作権、2010年はどうなる津田大介さんに聞く(2/2 ページ)

「ダウンロード違法化」スタート、補償金問題をめぐる権利者とメーカーの攻防の行方は――ネットと著作権をめぐる2010年の動きを、津田大介さんとともに展望する。

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 「著作権法をそのまま読むとSARVHが有利かと思うが、政令解釈でメーカー側も戦う余地がある。法律の専門家も、どちらが勝ってもおかしくないと話している」。SARVHはパナソニックも提訴する見通しで、「東芝、パナソニックの地裁、高裁訴訟のどこかの段階でメーカー側が勝つ可能性がある」と津田さんは指摘する。

 「メーカー側は負けても、補償金を支払えばいいだけ。だが権利者側には退路がない」という。「権利者が負けるとデジタル専用機からの補償金がなくなる。今後、地上デジタルに完全移行すると、録画補償金はゼロになる。録音補償金もここ数年で激減しており、録画補償金もなくなれば、補償金制度が機能しなくなる」

 そのため「権利者も必死」だ。「補償金で食べている団体もあり、そういう団体の存在意義みたいな話を含め、権利者側には退路がない」

著作権保護期間70年 鳩山首相の真意は?

 著作権保護期間を著作者の死後50年から70年に――権利者団体などが求めてきた保護期間の延長は、文化庁傘下の「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」で今年1月、「意見がまとまらなかった」として結論が先送りにされていた。

 その後目立った動きはなかったが、今年11月に開かれた日本音楽著作権協会(JASRAC)の創立70周年記念祝賀会で、鳩山由紀夫首相が延長案の実現について「最大限努力することを約束したい」と話し、関係者を驚かせた。

 「鳩山首相のコメントが、単なるリップサービスなのか本気なのかは分からない」と津田さんは話す。「本気で延長するという話になれば、審議会で2年かけて話し合ってきた内容をすっ飛ばすことになり、反発があるだろう」

 ただ保護期間の延長は米国からの要望でもあり、政府が国際取引の材料として使う可能性もあるという。「外交問題で米国に対するバーターとして保護期間の延長を差し出し、何かを得るという可能性もゼロではない」

Googleブック検索をめぐる紛糾 来年の出版界は

 過去に出版された日本の書籍が、米国の「Googleブック検索」に載り、全文を読めるようになる可能性がある――09年はGoogleブック検索をめぐる騒動もあった。「Googleは泥棒」と反発する出版社や作家もいれば、「知の共有が前進する」と歓迎する出版社も。和解案の修正案で結局、日本の書籍は対象外となったが、ネットと書籍のあり方を改めて考えさせる契機となった。

 Googleは世界の出版社などから批判を受け、「今はある種、最悪の状況にある」と津田さんは話す。だが今後「はい上がってくる」と展望。「Googleブック検索は、著者に売り上げの6割が入るという良いスキーム。このスキームに乗りたい著作者が今後、増えていくのでは」

 米国では書籍コンテンツのネット流通が進んでいる。Amazonの電子書籍端末「Kindle」やソニーの電子書籍リーダーも好調。iPhone向け電子書籍も増えており、AppleがMacタブレットで電子書籍配信を始めるとも報じられている。

 国内ではソニーが電子書籍端末への再参入を検討。「来年以降、日本にも米国の書籍配信のような仕組みが本格的に来るだろう」と津田さんはみている。「相当動きがある中で、日本の出版業界はどうしようかと悩んでおり、取り残されている感もある」と津田さんは懸念する。

Winny開発者、逆転無罪

 Winny開発者の金子勇被告は10月の控訴審判決で、逆転無罪が言い渡された。検察は最高裁に上告している。

 津田さんは、「高裁判決で技術者が罪に問われなかったのは良かった。ただWinnyには著作権侵害ファイルの流通だけでなく、ウイルスの流通などいろんな問題があるのは事実。技術と社会がどう向き合っていくか、議論を一歩先に進めていかなくてはならないのでは」と話している。

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