都が「青少年ケータイ」推奨・フィルタリング強化 青少年育成条例改正案(2/2 ページ)
都の青少年育成条例改正案のネット関連の規定に対して「民間の取り組みを萎縮させる」と懸念する声が挙がっている。
「きわめて漠然とした規定ぶり」
EMAの岸原孝昌さんは、フィルタリング対象の規定が青少年ネット環境整備法を超えていると指摘する。長谷部教授も「『犯罪もしくは被害を誘発することを容易にする情報』はきわめて漠然とした規定ぶりで、何が該当するのか判断が難しく、表現を萎縮させる恐れがある」と懸念する。
青少年ネット環境整備法にはフィルタリングを必要最低限にとどめることを求める規定もあるが、条例改正案にはそのような規定がないことも問題だと岸原さんは指摘する。
「ネットは現実社会と同じ」
条例案のベースとなった答申では、EMAが認定した「健全サイト」でも青少年が事件に巻き込まれていることを前提に、フィルタリングの実効性の強化が必要と指摘している。
EMAの上沼紫野さんはこういった指摘に対し、「問題が起きていることは把握をしており、さらに努力はしていきたい」としながらも、「コミュニティーサイト全般で被害が起きているというとらえ方には懸念を覚えている」と話す。
岸原さんは「ネットを使わない方々には誤解も多いが、ネットは現実社会と同じ。渋谷や新宿で青少年犯罪が多いからといって立ち入り禁止にしていいのか。事件をゼロにするための対策はネットを利用させないことだが、それでいいのか」と問題提起する。
「迷惑行為に税務調査並みの権限」
「都が青少年のネット利用に関する啓発についての指針を定める」とする規定も批判。「変化の激しいネット環境に対応した指針を都が示すことは不可能で、民間の自主的な努力を損なう」(岸原さん)と指摘する。
青少年がネットを利用して問題を起こした際、知事が保護者を調査できるという規定についても、「違法・有害行為にも至らない迷惑行為に対し、税務調査並みの権限を与えている」(岸原さん)と批判した。
端末推奨は「的外れ」 千葉大藤川准教授
ネット上でも、有識者が改正案の問題点を指摘している。千葉大学教育学部の藤川大祐准教授は、15日に都議会民主党に対して表明する予定の意見案をブログに掲載した。
藤川准教授は、フィルタリングの厳格化の方向性は支持するとしながらも、書面での理由提出に関しては「面倒を嫌う保護者が保護者名義で契約してしまえば無意味」と指摘。「都が認めた事情でなければ解除させないとか、解除関係の管理を事業者に委ねるといったことを定めても混乱するだけ。まして、都が事業者に立ち入り検査を行うというのは、不当な介入」と批判している。
都による携帯電話端末の推奨は「的外れ」とも。「子ども向けの端末でもネット機能があれば、フィルタリングを解除すれば有害情報にアクセス可能。都が推奨した端末が事件に使われたら、都の威信は地に落ち、状況は大きく混乱する」
インターネットユーザー協会(MIAU)の小寺信良さんもブログで問題点を指摘。フィルタリング解除の「正当な事由」の例として挙げられている、保護者による子どものログ参照は、子どものプライバシー侵害につながるなど懸念を表明している。
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