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20メガワットエクサスケールは破壊的イノベーションで実現するスマートフォンもスパコンになる!(20年前の)(3/3 ページ)

HPCで必要なエクサスケースコンピュータでは、消費電力の抑制が必須だ。NVIDIAは、GPUコンピューティングによる“脱CPU依存”がHPCの進化に不可欠と訴える。

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GPUコンピューティング開発を促進する「OpenACC」

 そこで、NVIDIAはCrayやCAPS Eneterprise、Portland Group(PGI)などとともに、CPUとGPUを連携する新しいプログラミング規格となる「OpenACC」を立ち上げた。このAPI規格は、既存の並列演算プログラムなどにディレクティブ(プログラムに埋め込むコンパイラへの命令)を加えることで、GPUによって高速化が可能なプログラム領域を特定し、同プログラムを再コンパイルし直すことで、大幅なパフォーマンス向上を図れるようにするものだ。これまでのGPUコンピューティング環境は、プログラミングの難解さが最大のネックとされてきたが、OpenACCが用意するAPIにより既存のプログラムでGPUアクセラレーションを適用できるようにできるため、短期間で並列演算プログラムを構築できるようになるわけだ。

 これを受けて、Crayは、同社が開発を進めているスーパーコンピュータ「Titan」でNVIDIA製GPUをアクセラレータとして搭載することを表明したほか、PGIはFortranやC/C++言語向け高性能並列コンパイラで同規格に対応したことをアナウンスし、NVIDIAのWebページ「2x in 4 weeks」で1カ月間の無償トライアル版の配布も開始している。

NVIDIAは、CrayやPGIなどとともに、既存のプログラムをGPUアクセラレーションに対応できるようにするオープンソースのプログラミングAPI規格「OpenACC」を立ち上げ、GPUアクセラレーションの普及を目指す(写真=左)。GPUを活用することで、4週間で既存のHPC向けプログラムを2倍以上の性能を発揮できるようになるとアピール。OpenACCに対応したPGIのコンパイラの1カ月間無償トライアルも実施している(写真=右)
現在のGPUアクセラレーション技術を活用することで、2022年には20メガワットで1エクサFLOPS実現できる見通しがたった(写真=左)。CPUとGPUの連係をさらに高めていけば、2019年にも目標を実現することは不可能ではないというのがファン氏の主張だ(写真=右)

 GPUを並列演算処理のアクセラレータとして活用するメリットは、HPCに限ったことではないとファン氏はアピールする。基調講演の中で、ファン氏は、ワークステーションPCに演算処理用のTeslaとグラフィックス処理用のQuadroを搭載したNVIDIAのGPUアクセラレーションソリューション「Maximus」のデモを披露しているが、Maximusでは、演算負荷が大きなときはQuadroにも負荷を振り分けることで、これまで大規模サーバなどに演算を任せなければならなかった流体シミュレーションやCGフィルムメーキングも、リアルタイムで処理できるようになるとして、並列演算処理におけるGPUアクセラレーションを、より多くのデバイスで活用できるようにする考えを示した。

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 その上で、ファン氏は、より多くのプログラムでGPUをグラフィックス処理だけでなく、演算処理にも活用できるようになれば、携帯デバイスやゲームコンソールの性能も飛躍的に向上できると述べている。2019年に20メガワットで1エクサFLOPSを実現できれば、携帯デバイスは5ワットで数テラFLOPS、ゲームコンソールは100ワットで数十テラFLOPS、そして、ワークステーションや高性能デスクトップPCは1000ワットで数百テラFLOPSの演算性能を手に入れられるようになると予測する。

 ファン氏は、この技術を応用すれば、スタートレックに登場する士官向けのモバイルデバイス「Starfleet Tricorder」のような多目的高機能デバイスも生み出せるかもしれないと、HPC市場のみならず、ほかのITデバイスの発展にも役立つという考えを示した。

GPUを演算に活かせるデバイスは、なにもHPCではない、携帯デバイスからワークステーションまで10億以上のデバイスの処理能力も向上できる(写真=左)。2019年には、携帯電話の処理能力は5Wで数テラFLOPSに達すると考えられており、その性能は1997年に世界最速を誇ったスーパーコンピュータ「ASCI Red」と同等のものだ(写真=中央)。2019年のゲームコンソールは、100Wで数十テラFLOPSの演算性能を持つ。その性能は2004年最速のスーパーコンピュータ「Red Storm」と同等だ(写真=右)
消費電力1000ワットクラスのワークステーションPCで、2019年には2006年で最速のスーパーコンピュータ「Blue Gene」と同等の数百テラFLOPSの演算性能を持つようになると予測する(写真=左)。ワークステーションPCに演算処理用のTeslaとグラフィックス処理用のQuadroを搭載した同社のGPUアクセラレーションソリューション「Maximus」では、演算負荷が大きなときはQuadroにもワークロードを振り分けることで、これまで大規模サーバでなければ演算できなかった流体シミュレーションやCGフィルムメーキングも、リアルタイムで処理できるようになる(写真=右)
ファン氏はGPUを演算処理に利用すれば、スター・トレックに登場する士官向け携帯デバイス「Starfleet Tricorder」のような多目的高機能デバイスも生み出せるかもしれないと、その可能性の高さをアピールし、基調講演を締めくくった
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