ファイル互換から作業スタイル互換へ――「Office for mac 2011」説明会:Macworld Conference&Expo 2010(2/2 ページ)
既報の通り、マイクロソフトがMac版Officeの次期バージョン「Office for Mac 2011」を発表した。Macworld Expoで行われたプレス説明会では、同社Mac BUのアマンダ・ルフェーブル氏と、Macエバンジェリストのカート・シュマッカー氏の2人が製品の特徴を語った。
そして操作にも互換性
Office 2011では、Windows版Officeとの操作の互換性にも力を入れている。ここで中心的な役割を担っているのが、リボンという操作要素だ。すでにWindows版Officeや「Microsoft Office Web App」でも採用されていることから、Officeとしての操作方法の統一を図るうえでもリボンの搭載は避けられない。
ところで、このリボンは、どんな目的で作られた操作手段なのか。詳しいことはMac BUのユーザーインタフェース担当、ハンイー・ショー氏が、Office for mac 2011発表日にMac BUのブログで書いている(「Welcome to the new Office 2011 User Experience」)。
かいつまんで言うと、これは多すぎるOfficeの機能を見つけやすくするために搭載された操作要素だ。「Officeを紹介して世界を回っていると、たくさんの要望を受ける。一番、ガッカリするのは、すでに搭載済みの機能をリクエストされた時だ」とシュマッカー氏は語る。Officeは、機能があまりに多すぎるために、せっかく機能している機能がなかなか発見されないというジレンマを抱えてきた。
これまでMac版Officeでは、計算機型の関数入力インタフェースやDTPソフトのように使えるデザインレイアウト機能、編集中のデータ形式にあわせて自動的に切り替わるツールパレットといった形でそれらの機能を可視化してきた。一方、同じ問題に対するWindows版Officeの解決アプローチがリボンだ。現在、編集中のデータの種類にあわせてウィンドウの上に、そのデータに対して行える操作の一覧をアイコンとして表示する。
Mac BUは、Windows版Officeのリボンがどのような評判かをつぶさに調査したうえで、同じリボンを導入するにしてもMacらしい方法で採用しようと決めていたという。
まず行ったのは、開発環境にCocoaを用い、CoreAnimationという技術で、Mac OS Xらしいアニメーション効果を加えることだった。続いて、Windows版Officeのリボンでは一部のユーザーが画面スペースを奪われることに不満を感じていると分かり、Mac版Officeでは、リボンを畳めるようにした。畳んで文字だけの表示にすることもできれば、完全に畳んで表示しないようにすることもできる。
もう1つの改良は、リボンに表示する項目を減らすことだ。Mac版Officeでは、ウィンドウ上に表示されるリボンの上には、編集中のデータの種類に関わらず呼び出せる機能を集めたツールバーがあり、画面のさらに上にはWindows版Officeにはないメニューバーもある。
Mac版では、あまり使わない機能は、すべてメニューに逃がすことができるので、リボンには本当によく使う機能だけを入れるようにしたという(Windowsでは、これができないので、すべての機能をリボンに詰め込んでいる)。シュマッカー氏は「我々はメニューバーとツールバー、リボンを非常にうまく使い分けたと自負している。もちろん、それが気に入らない場合は、いつでもカスタマイズができる」と説明した。
マイクロソフトには、製品のできを実際のユーザーに聞いて調査するユーザビリティー・ラボがあるが、実際にWord 2011とPowerPoint 2011の2アプリケーションをテストしてみたところ、非常に好評だったという。新しいユーザーインタフェースは「直感的で分かりやすい」うえに「非常にMac的」という評価が多かった。また、どのアイコンが何のためのものかもすぐに理解でき、自然に操作を受け入れてくれたという。
AV版Messengerは来月リリース
説明会の後の質疑応答で、ルフェーブル氏は現在、Office for mac 2011で公開している3つの特徴の1つが、Outlookであるため、企業向け側面が強い印象を与えるかもしれないが、Office for macは非常に幅広いユーザーが使っている製品であり、夏には企業ユーザー以外に向けた機能も紹介できる、と語った。
またシュマッカー氏は、Mac版Officeは常にMac版ならではの目玉機能を用意してきたが、こちらも健在で夏ごろには発表できると予告した。またOffice関連の製品ではビデオチャットにも対応したMessengerが3月中にリリースされることを明かした。
iPadやiPhoneへの対応については、今のところ興味はあるが発表することはないと語っているが、Macworld Expo会場では、マイクロソフトの検索サービスのチームが作ったBing検索用iPhoneアプリも出展されていた。
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