Windows 8は創造性を犠牲にしないか?――開発責任者インタビューを終えて:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
タッチ操作を重視したWindows 8のユーザーインタフェース設計は正しい進化なのか。Windows開発責任者のインタビューで納得した部分もあったが、疑問は残る。
PCとタブレットは同じプラットフォームが望ましい?
最後に、シノフスキー氏の言う「アプリケーションのユーザーインタフェースを設計する上で、一番大きなファクターは画面サイズ。だからPCとタブレットは同じプラットフォームのほうが望ましい」という意見は、氏へのインタビューの中で一番腑(ふ)に落ちた部分だった。
確かに、フォームファクタや利用スタイルという面だけを見れば、スマートフォンとタブレットは近い関係にある。ハードウェアだけならば、iPod touchとiPad Wi-Fiの本質的な違いは画面サイズぐらいのものだ。
しかし、画面サイズが異なれば、ユーザーインタフェース設計は大きく変化する。PCとタブレットの両方で使えるユーザーインタフェース設計をするほうが、タブレットとスマートフォンの両方で快適に動くユーザーインタフェースを作るより易しい。これはソフトウェア開発の視点で物事を考えるマイクロソフトらしいやり方だ。
画面を通じたユーザーとのインタラクションさえ確定してしまえば、タッチだけでも、そこにキーボードやマウスが加わったとしても、プログラム側の対応はさほど難しくない。ユーザーインタフェース以外の部分(例えば、何らかの処理ロジックやサービスとの連動部分)は、大部分をそのまま利用できる。
もちろん、従来と同じ使い方を阻害されないことが前提だが、Windows 8がタブレットにフォーカスしたユーザーインタフェースやAPIの変更をかけようとすることに対して、徐々に拒絶反応のようなものはなくなってきた。
また現状、セキュリティ上の問題が指摘されるAndroidはもちろん、企業システムとの統合が厄介なiOSよりも、ARM版のWindows 8のほうが管理性その他を含め、管理者には扱いやすい。まだ心のモヤモヤが消えたワケではないが、過去のしがらみを捨てて新しいWindowsのユーザーインタフェースがどうなるのか。パートナーとも連動しながら進めているだろう、Windows 8上で動くMetroの操作環境に期待したい。
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