第20回 “待受画面争奪戦”の行方:コンテンツ業界の底辺でイマをぼやく(3/3 ページ)
待ち“受け”画面。その名のとおり、メールなり電話なりの着信を待つ“受身”な画面。……でしたが、iコンシェルやモバイルウィジェットといった新サービス搭載機では、待たずに“攻め”る画面へと変わりつつあります。
“日本式”の待受画面がないiPhoneのほうが分かりやすいかも?
今回かなり話が錯綜しています。すみません。もうちょっとお付き合いください。自分でもこの“待受画面争奪ウォーズ”のことをまだまだ整理できていないのです。ただ、こう考えていくと、「iPhone 3GSって、待受なくて分かりやすいわぁ」と思わずにはいられません。
もちろん、待受がないわけじゃなく、概念が違うだけなのですが(iPhoneの待受画面は起動時/スリープ時に表示されます)、“日本のケータイ感覚”で語ると、「待受ナシ」と表現してもいいのではないでしょうか。「iPhone 3Gのスタート画面」といわれたら、皆さん、本体メニューとAppのアイコンが並列に並べられた(かつ自由に配置をカスタマイズできる)、おなじみのあの画面を思い浮かべるはずです。
着信メールや更新情報はそれぞれのアイコン上で表現されるという、実にすっきりしたGUI。それでもアラートを見逃す心配はありません。また、アイコンが並べられたこの画面に、パブリックな情報が表示されることはありません。電車の遅延情報もニュースも流れない。パブリックエリアは、Safari、もしくはApp Store、iTunes Storeなどを起動時したときにはじめて表れるわけです。
「何かをしよう」という気持ちのセットがあってから、「何かをする」。それはとても普通のこと。「このDVDを見よう」と思ってDVDをセットしてから、再生ボタンを押す。「今日はドライブでもしよう」と思って車に乗ってから、アクセルを踏む。そんな普通の気持ちの流れ。気持ちの切り替え。その流れを踏まえるにはやはり、スタート画面にパブリックな情報がどーんと表示されているというGUIは、あまり適さないように、僕は思います。
もちろん、人間の気持ちの切り替えを究極まで先読みしてサポートしようという、ドコモのiコンシェルやauのケータイサポート(β版)などといった行動支援サービス、それ自体はすばらしいと思いますし、可能性も感じています。ですが、そうしたサービスを、何も待受画面を占拠して、24時間提供する必要はないのではないかとも思うわけです。
3月からau oneラボでの提供が始まった「感性型」エージェントサービスことケータイパートナー(β版)は、かなり割り切ったサービス内容とGUIになっていました。これは、多機能化したケータイをユーザー個々人の利用実態にあわせて、より使いやすくしようという試みだと聞いています。
そう聞いてはいますが、ここまで待受画面にキャラクターをどーんと鎮座させてしまうというのも、なかなかにすごいものがあるなと思うわけです。まだまだβ版であるということ、そしてその目的を鑑みたとしても、自分的にはこれまたやはり、「これを待受で展開しなくても別に良いのでは?」という疑問が……。
「あの機能に、あの情報にたどり着けない!」というときに呼び出せればそれで良いじゃないですか、と思うわけです。現状のGUIだと、「ケータイがまるごとパートナー」という感じですけども、個人的には、「ケータイのなかに住んでいて呼び出したら現れるパートナー」くらいがうれしいですね。
今回はなんだかいつも以上にこんがらがって、あっちこっちいった話になってしまいましたが、お許しくださいませ。1年後、2年後にケータイの待受画面がどんなことになっているのか、楽しみであり怖くもあり……。もうちょっと未来像を整理してみたい、そんな最近でございます。
プロフィール:トミヤマリュウタ
ときにライター、ときにデザイナー、ときにプランナー。某携帯電話関連会社にて某着メロ交換サイトを企画するなどといった若気のいたりを経て、2001年に独立。2004年には有限会社r.c.o.を設立し、2008年に株式会社化。書籍、雑誌、ウェブの執筆・デザインなど、各種制作業務を中心に活動。2006年あたりから始まったケータイ業界再編の波にもまれていうるちに、近年では大手携帯電話会社のコンテンツ企画を手がけることになっていたりと、なんだか不思議な毎日。
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