中期ビジョンの実現に向け「何としてもパケットARPUを上げたい」――ドコモの山田社長
量的成長から質的成長への転換を目指す「中期ビジョン」の発表から、ちょうど1年後にあたる今回の決算会見。NTTドコモの山田社長は中期ビジョンの実現に向け、「何としてもパケットARPUを上げ、2011年に音声ARPUとパケットARPUの逆転を目指す」と意気込んだ。
10月30日、NTTドコモが2010年3月期の中間決算を発表した。売上高は前年同期比5.4%増の2兆1458億円、営業利益は前年同期比15.9%減の4852億円で減収減益となった。
今期の営業利益の減少に大きな影響をもたらしたのは、1471億円減となった音声収入だ。前年同期比で520円減少した音声ARPUの内訳は、バリュープランの影響が約200円、MOU(1契約者あたりの月間平均通話時間)の減少が約200円、そのほかが約100円。バリュープランはドコモが加入を推奨しており、全ユーザーの約半数(49%)にあたる2703万まで契約数をのばしたが、音声収入面では600億円のマイナスにつながった。パケットARPUは、パケット定額プラン「パケ・ホーダイ ダブル」の下限を390円に値下げしたことから契約が増加し、それに伴って前年同期比80円増の2440円となったが、音声ARPUの減少分は補えなかった。
また、冷え込みが続く端末販売は、総販売台数が前年同期比146万台減の881万台となり販売収入も667億円のマイナスとなったが、端末販売にかかる経費も556億円減少したことからほぼ均衡を保った格好。ほかにも今期は、オークローンマーケティングが連結対象になったことや、「ケータイ補償 お届けサービス」の利用者が2000万人を超えるといったトピックがあったが、これについては「収入も増えるが、費用も増える」という状況だっとNTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏は振り返った。
なお、減収減益となった要因については、前年同期が新販売モデルの導入による利益浮揚効果や、ムーバ資産の繰り上げ償却で大きな利益が発生するという「特殊な年であった」(山田氏)とし、上期の進捗は想定通りとしている。
今回の決算を受けてドコモは2009年度の業績予想を見直すとし、8300億円という営業利益はそのままにその内訳を変更。具体的には音声ARPUを当初予想比20円減となる2840円に、パケットARPUを当初予想比40円増となる2460円に見直し、音声収入の130億円のマイナスを250億円増となるパケット収入で補う形にする。
また、端末の総販売台数を当初予想の1970万台から150万台減の1820万台に引き下げ、それに伴う販売手数料の240億円減を見込む。ただ、新端末の出荷が減る分、1台の端末を長く使うケースが増えることから、故障対応などのコストとして240億円を充てる考え。ほかには販売強化の手数料として190億円積み増す一方、コスト削減で70億円減を見込み、当初予想と同じ8300億円の営業利益を目指す。
“2年縛り明け”の影響はピークを越える
ドコモはこの9月、2年前に導入した新割引サービス「ひとりでも割50」「ファミ割MAX50」の契約が切れる、いわゆる“2年縛り明け”ユーザーの一部が他キャリアに流れて純増数が伸び悩むという事態に直面したが、山田氏は今後の影響について、解約数は9月がピークであり、10月は従来の水準に戻りつつあると説明した。
実際には9月に平均600万の“2年縛り明け”が発生し、解約は約7万件だったという。「10月、11月は(2年縛り明けの契約者が)200〜300万に減り、同じ解約率だったとしても絶対数は減る」(同)。また、初期に契約したのは料金にシビアな利用者が多く、契約切れのタイミングでよりリーズナブルな料金のキャリアに移った可能性が高いが、これからは「サービスも見ていただけるのではないか」と予測する。解約率についても、“2年縛り明け”の契約者がピークを迎えた9月には0.53%に上がったものの、上期の水準は0.45%と低い水準で推移している。
ドコモが携帯電話向けの新たな付加価値サービスとして注力しているiコンシェルも契約数が230万を突破するなど好調で、11月にはGPSと連動したサービスの導入でサービスの幅を広げる構えだ。
また、最近注目を集めているスマートフォンについては、AndroidやWindows MobileなどのオープンOS向けアプリマーケットの流通基盤を今年度中に構築する計画。東芝製のWindows Mobile端末「T-01A」向けには、12月にもWindows Mobile 6.5のアップデートソフトを配布する予定であることも明らかにした。
ドコモは2008年の10月31日に、量的成長から質的成長を目指すための「中期ビジョン」を発表しており、今回の決算発表はそれからちょうど1年目にあたる。この1年で顧客満足度を向上させるという意識がドコモ社員に浸透し、それが解約率の低下につながるなど、「お客さまからも評価いただけた」と山田氏は胸を張る。また、2012年に向けては、一部芽が出てきたサービスもあるもののまだ道半ばであり、新たな種まきをしていくとアピールした。
中期ビジョンの実現に向けては「何としてもパケットARPUを上げ、2011年に音声ARPUとパケットARPUの逆転を目指す」と意気込む。2012年にはパケット定額サービスへの加入率を70%に上げるとともに、上限到達率を50%を目指す考えだ。
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