バッテリー持続時間が約3倍に――“小さくて長持ちする”Qualcommのmirasolディスプレイ:Uplinq 2010 Conference
ケータイのディスプレイは「液晶」と「有機EL」が主流だが、これら2つに加わる第3のディスプレイが登場しようとしている。Qualcommが開発中のmirasolディスプレイは、バックライトを必要としない低消費電力が大きな特長だ。
米Qualcommが米国のサンディエゴで6月29日〜7月1日(現地時間)に開催中の技術紹介イベント「Uplinq 2010 Conference」で、新しいディスプレイ技術「mirasol」を披露した。
mirasolは、見る角度によって蝶の羽の色が変わる原理を応用した反射型のディスプレイ。MEMS(Micro-Electro Mechanical Systems:微小電気機械素子)技術を使い、光を反射させる波長を干渉させることで発色させている。具体的には、R(赤)G(緑)B(青)のピクセルあたりの空気層の厚さを電圧で変えることで、光の反射をコントロールしている。
外光を反射させて発色するのでバックライトが不要となり、消費電力を抑えられるのがmirasolの大きな特長だ。「iPadほどのタブレット端末にmirasolを搭載した場合、バッテリーの持続時間は3倍に延びる」とQualcomm MEMS Technologiesのシェリル・グッドマン(Cheryl Goodman)氏は説明する。バックライトなしで利用できるので、外光が明るいほど鮮明に表示でき、屋外の明るい環境でも視認性が高い。
「mirasolディスプレイは電源が課題のデバイスに有効。お客さんがケータイをより頻繁に使うようになってから、バッテリー容量の需要と供給の差がこれまで以上に大きくなっている。最も電力を消費する部分(ディスプレイ)に解決策を提示したかった」とグッドマン氏はmirasol開発の経緯を話す。文字や画像だけでなく、動画やゲームの再生も可能で、「再生時のレスポンスも速い」とのこと。「mirasolは、電子書籍端末と、iPadのようなタブレット端末のいいとこどりをしたディスプレイといえる」と同氏は形容する。
さらに、6.1インチの液晶が4200mAhのバッテリーを要するのに対し、5.7インチのmirasolディスプレイは2100mAhのバッテリーで十分という具合に、mirasolは搭載端末の小型化にも貢献する。
今回紹介されたmirasolはカラーディスプレイだが、モノクロのディスプレイはすでに商用化されており、China Telecomのケータイや、韓KTFのモニターカメラ、米国ではBluetoothヘッドセットのコントーラーに採用されている。まずは2010年末に、mirasolのカラーディスプレイを搭載した電子書籍端末が発売される予定。「端末の出荷台数を見ても、スマートフォンは重要」とグッドマン氏が考えるとおり、詳細な時期は未定ながら、今後はスマートフォンや一般のケータイへも搭載していく見通しだ。すでに5.7インチ、XGAサイズのカラーディスプレイが開発されており、高解像度のタブレット端末への採用も期待される。
なお、mirasolディスプレイは暗い場所では視認性が落ちるが、端末メーカーがバックライトを搭載することも可能。「ケータイをアラームに使っていている人が、朝起きたときに暗い部屋でディスプレイが見えないと不便、と感じることもありえるので、バックライト付きが主流になるかもしれない」とグッドマン氏はみている。また、タッチパネルについても、メーカーの判断で対応可能となる。ディスプレイの視野角や耐久性については「通常の液晶と同等レベル」とのこと。
「このような(省電力に注力した)ディスプレイでカラー表示に対応したものは、現在は存在していない」とグッドマン氏は胸を張る。mirasolが「液晶」や「有機EL」に続く新しいディスプレイ技術として、スマートフォンやケータイにどこまで浸透するか、注目したい。
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