低迷する国内市場からどう羽ばたくか――NECカシオモバイルの山崎氏に聞く(2/2 ページ)
国内端末市場の縮小、海外メーカーの台頭など、日本の携帯電話メーカーを取りまく環境は日増しに厳しさを増している。こうした中、合併で規模を拡大するとともにブランド価値を高めようとしているのがNECカシオモバイルだ。生き残りと再生をかけた端末戦略を、代表取締役執行役員社長の山崎耕司氏に聞いた。
ITmedia 従来型ケータイの市場縮小と、新時代を体現するiPhone/iPadが日本市場で売れた。これは従来型のケータイを主軸とする日本メーカーにとって、影響の大きいものでしたね。
山崎氏 ええ。あと、それとは別に昨年から注目しているものとして、ソフトバンクモバイル向けに端末を提供するSamsung電子や、ドコモ向けに端末供給するLGエレクトロニクス(以下、LG)の存在があります。特にドコモ向け端末市場では、LGがシェアの一角を占めるようになっており、日本市場で韓国メーカーの存在感が増してきています。LGもよく(携帯電話作りを)勉強しているようで、作る製品の質も向上してきた。私の目から見ても、「よくできている」と思えるようなモデルが出てくるようになりました。
ITmedia 韓国メーカーの台頭は、特に2010年に入って強く感じますね。もともと彼らはモノ作りの力があったのですが、それが日本市場のマーケティングとうまく結びつくようになりました。
山崎氏 あと今年でいえば、台湾メーカーや中国メーカーも注目ですね。スマートフォン分野におけるHTCはもとより、HuaweiやZTEなど中国メーカーまでもがデータ端末やフォトフレームなどケータイ以外の製品で勢力を伸ばしています。まあ、韓国や台湾メーカーが日本市場でライバルになってくるのは分かる。しかし、中国メーカーまでもが存在感が出てきいるのですよ。これは大きな変化といえるでしょう。
ITmedia 今年に入ってから世界的にAndroidが注目されています。Android市場をどのように見ていますか。
山崎氏 Androidについては、我々も予測が甘かった。Android市場の広がりが加速していると感じています。Android市場がいずれ重要になるとは考えていましたが、メーカーとして取り組むとなると巨額の投資が必要になる。そこで「いつやるか」のタイミングが重要になるわけですが、ここで我々は少し出遅れてしまった。まさか2010年の段階でここまで(世界的に)動きが加速するとは思っていませんでした。
ただ、こうした読み違いは我々だけというわけでなく、LGやSamsung電子など韓国メーカーもAndroidの取り組みではHTCに後れをとった。Androidでは台湾メーカーをどうキャッチアップするかが重要ですね。
ITmedia 携帯電話メーカーの進化と、PCメーカーのモバイルシフトが重なり合ってきた感じですね。
国内シェア1位を奪取し、世界を目指す
ITmedia 現在のNECの商品力・競争力について、どのように評価されていますか。
山崎氏 厳しいですね。おかげさまでStyleシリーズは一定の評価をしていただけていますが、いかんせんPRIMEシリーズの訴求がうまくできていません。我々はPRIMEシリーズでWi-Fiルーター機能の内蔵を行い、これを優位性として位置づけているのですが、うまく訴求できていませんね。
ITmedia しかし、モバイルWi-Fiルーター機能そのものは注目されてきていますよね。
山崎氏 そう。我々が商品企画をした時はニンテンドーDSを接続するイメージだったのですが、ここにきてiPad(のWi-Fi版)を接続するニーズが立ち上がりました。我々は「iPadは、NECのケータイ(のWi-Fiルーター)で使うと快適」と考えているのですが、店頭での訴求がうまくいっていない。
ITmedia 店頭販売で見ると、iPadは3G版の方が売れていますね。
山崎氏 ええ。そのあたりはマーケティングを強化しないといけない。しかし、中長期的に見れば、iPadのようなケータイ/スマートフォン以外の通信機器は増えていく。そこではモバイルWi-Fiルーター機能の重要性が、さらに増してくるでしょう。
ITmedia 今後のNECカシオモバイルコミュニケーションズが目指す方向性というのは、どのようなものでしょうか。
山崎氏 まずは2年以内にユーザーの皆さんを驚かせるような、画期的な商品を出します。ここで3社合併の成果をひとつの形にしたいとは考えていますが、まだ具体的なことはお話しできません。
そして、我々の優位性を確立し、それをしっかりと訴求する体制を整えて、3年以内に日本市場で年間販売シェア1位を獲得します。国内でシャープに勝つ。このくらいできなければ海外市場に進出して生き残ることはできません。ですから、(シャープを追い抜いて)国内シェア1位を取るということは、我々にとって重要なステップと位置づけています。
4年以内には国内外あわせて年間出荷台数2000万台、8年以内に5000万台という目標を持っています。前者は欧米先進国を中心に進出すれば達成できる数字ですが、後者はBRICsなど新興国市場への展開が必要になってくる。こうした成長の過程においてはロジスティックスや販売チャネルの施策において、他の日本メーカーとの連携も必要になると考えています。
ワイヤレスジャパン 基調講演
7月16日(金)の10時からレセプションホールBで、NECカシオモバイルコミュニケーションズ 代表取締役 執行役員社長の山崎耕司氏が「NECカシオモバイルコミュニケーションズの戦略」と題した講演を行います。受講料は無料。詳細と申し込みはここから。
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