スマートフォンとフィーチャーフォンは融合していく――ドコモの辻村氏:CEATEC JAPAN 2010(2/2 ページ)
秋冬モデルでの新端末ラッシュが予想されるスマートフォン。ドコモの辻村氏は、フィーチャーフォンはスマートフォン化し、スマートフォンにはフィーチャーフォンの機能が入って“両者は融合に向かう”と話す。その一環として、ドコモマーケットのiモード版を提供する計画があることを明らかにした。
日本マクドナルドとドコモは2008年、おサイフケータイを活用したマーケティングを行うための企画・運営会社としてThe JVを設立。それまで紙で配布していたクーポンを電子クーポンに切り替え、来店者動向をマーケティングデータとして活用し始めた。
来店者は、店頭のリーダー端末におサイフケータイをかざすことでクーポンを利用でき、店側はその情報をリーダー端末を通じて取得できる。これにより、店舗側には、何曜日の何時に、どんな世代の顧客が来ている――といった動向や、売れ筋情報などのデータがアーカイブされ、それを生かした店舗運営が可能になる。「ほかにない試みで、世界のマクドナルドがこの方式に注目している」(辻村氏)
このCRMサービスは注目を集めており、ドコモでは会員証の発行や商品の購入履歴などの収集、最新情報や割引クーポンの配信などのCRMサービスを実現する「モバイルマーケティングASPサービス」を、2011年1月から提供する予定。すでにイオンやローソンが導入を決めているという。
もう1つの例として挙げたのは、iコンシェル。このサービスは2009年の冬春モデルから位置情報との連携に対応し、より地域に密着した情報配信が可能になった。「例えば街のパン屋は、焼き上がった時に、店から徒歩10分以内のエリアにいる人に向けてクーポンを配信できる。クリーニング屋が(客の少ない)雨の日に割引クーポンを出すなど、いろいろな事例が考えられる」(辻村氏)
この8月からは、コストをかけずにiコンシェルを通じた情報配信を可能にする、月額630円の「iコンシェル提供サイト」を提供しており、さらなる利用シーンの拡大を目指す考えだ。
スマートフォンとフィーチャーフォンは融合していく
グローバル化の視点で見た今後の進化について、辻村氏が真っ先に挙げたのは、スマートフォンの動向だ。ドコモでは今年度末までのスマートフォンの販売目標を100万に設定しており、Xperiaの投入で約50万に到達。「GALAXY S」「GALAXY Tab」をはじめとする秋冬モデルの投入で100万台達成を目指す。
日本市場はフィーチャーフォンの性能が高いことから、海外に比べてスマートフォンへの移行が遅い傾向にあるが、「ここ数年で、全体の30%くらいがスマートフォンになるかもしれない」と辻村氏。その過程で、フィーチャーフォンはスマートフォン化し、スマートフォンにフィーチャーフォンの機能が入ってくるため、「この2つは融合していく」(辻村氏)と話す。「ここ3年くらいは両者が併走し、そのうちにだんだんと融合する時代が来る」(同)
ドコモでは融合の1つの道筋として、スマートフォンでフィーチャーフォンのキャリアメール機能などを利用できるようにする「spモード」を提供。今後はさらに、フィーチャーフォンの機能を入れていくとしている。
一方で、フィーチャーフォンについては、Android端末向けに提供している「ドコモマーケット」のiモード版をつくり、個人のクリエーターが開発したiアプリを広くリリースできる環境を提供する予定であり、iモード側のスマートフォン化にも積極的に取り組むとした。
さらに辻村氏は、これからの大きな動きとして携帯電話のNFC(Near Field Communication)対応にも言及した。日本の携帯電話はType Cに準拠したFeliCaの搭載が主流となっているが、韓国や欧州ではType AやType Bが使われており、混乱を避けるためにNFCに統一する動きがあるという。「どこに行ってもタイプを意識せずに利用でき、決済サービスも非接触端末を使ってできる時代がくる。すでに、いろいろなキャリアが試行サービスを始めており、おそらく2012年から2013年にはおサイフケータイのようなサービスが世界中で始まってくる」(辻村氏)。日本でもKDDIとソフトバンクモバイルが韓国のSK Telecomと、NFCを活用した日韓共通サービスの検討を進めるなど、新たな動きが出始めている。
ドコモも、世界と歩調を合わせてNFCケータイの対応を進めると辻村氏。ただ、ドコモが端末にチップを埋め込む形でFeliCaを搭載しているのに対し、世界のトレンドではSIMカードにNFCチップを入れようとしているなど実装方式が異なるといい、技術の進展に応じてどうするかを検討する方針だ。
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