効果が期待できない関西電力の新プラン、「オフピーク時間」の単価が高い電力供給サービス

関西電力が家庭や商店向けに7月から導入する時間帯別の料金プランが明らかになった。東京電力の新プランと比べれば意欲的な内容だが、電気料金に大きく影響する「オフピーク時間」の単価が通常の契約よりも高く、特に商店向けの契約と比べると2割以上も高い。

» 2012年05月22日 14時17分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 関西電力が7月から導入予定の時間帯別の料金プラン「季節別電灯PS」の単価が5月21日に公表された。夏季(7月〜9月)の平日午後1時〜4時の「ピーク時間」の単価を従来の2倍以上に引き上げる一方、夜間の単価を3分の1程度に引き下げる(図1)。

 ピーク時間と夜間の料金差が6.45倍で、東京電力の同様のプランの料金差4.39倍よりも大きくなっており、相対的に見るとメリハリのきいた設定になっている。ただし対象となる時間が最も長い「オフピーク時間」の単価が東京電力と同様に、通常の契約よりも高く設定されており、利用者から見て新プランへ契約を切り替えるメリットがあるかは疑問である。

ALT 図1 時間帯別の新プラン「季節別電灯PS」の料金体系。出典:関西電力

 関西電力が家庭向けに従来から提供している標準的なプランは「従量電灯A」と呼ぶタイプで、季節や時間帯に関係なく4段階で単価が設定されている(図2)。この料金体系と新プランは構造が多少異なるが、電気料金の大半を占める「電力量料金」を比較すれば大まかな違いが分かる。

 新プランのオフピーク時間の単価を標準プランと比べると、3段階に分かれている単価がいずれも8〜9%高く設定されている。ここで注意すべきは、夏季以外の10月〜6月においても夜間(午後11時〜午前7時)を除いて、このオフピーク時間の単価で徴収されることである。

ALT 図2 家庭向けの標準プラン「従量電灯A」の料金体系。出典:関西電力

 さらに一般家庭よりも電力使用量の多い商店や事務所などが契約している「従量電灯B」の場合には、もともと従量電灯Aよりも安い単価が設定されているため(図3)、新プランのオフピーク時間の単価は23〜35%もの大幅な値上げになってしまう。その代わりに夜間の単価は半分以下になることから、午後11時以降の電力使用量が多い商店や事務所に限れば、契約を切り替えるメリットはあるだろう。

ALT 図3 商店や事務所向けの標準プラン「従量電灯B」の料金体系。出典:関西電力

 関西電力が夏季のピーク時間の電力需要を抑制するために導入する新プランだが、料金面でメリットを享受できる家庭や商店は少ないとみられる。本来であれば、オフピーク時間の単価を通常の契約よりも安くすることで、新プランへの切り替えを促進し、より多くの利用者が積極的にピーク時間の電力使用量を削減するようにすべきだ。結局のところ、料金収入の確保を前提にしたプランでは、利用者がメリットを感じることは難しい。

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