東京電力が7月1日からの電気料金の値上げ案を経済産業大臣に申請した。特に単価の値上げ率が大きいのは、商店などが利用する契約形態の場合で、夏季のみならず年間を通じて20%以上も高くなる。
5月11日に東京電力が申請した電気料金の値上げ案が各方面に波紋を広げている。申請した内容の説明資料を見ると、家庭や商店向けの新単価、6月にも導入予定の新料金プランが記載されているが、いずれも利用者側から見て問題点が多い。
値上げの対象になる「低圧」と呼ばれる電力の契約形態は、実際には5種類のタイプに分かれている。それぞれの単価(1kWhあたり)の値上げ率を平均すると10.28%になる。さらに契約タイプ別の新単価をもとに、基本料金(今回は据え置き)を加えた月額の電気料金が標準モデルで提示された(図1)。一般の家庭が最も多く利用している「従量電灯B」の値上げ率が6.9%になるのに対して、商店や小規模の工場などが利用する契約形態では9.9%〜14.4%と一般家庭を大きく上回る。
中でも電力使用量の少ない商店などが使う「低圧電力」の場合、値上げ後の単価を見ると、夏季(7月〜9月)で24.4%、それ以外の月でも22.3%の大幅なアップになっている(図2)。国内の景気が低迷している状況で、7月からの厳しい節電を迫られることになる。
一方、家庭向けに6月から開始予定の新料金プランは、利用者側で相当な節電対策を実施することを前提とした内容だ。夏季の午後1時〜4時を「ピーク時間」として、その時間帯の単価が標準プランの2倍以上に設定されている。その代わりに夜間(午後11時〜午前7時)の単価は標準から2分の1程度まで下がる(図3)。
ただしピーク時間と夜間を除いた「昼間」(午前7時〜午後1時、午後4時〜午後11時)の時間帯でも単価が高くなる(7月から29.66円)。家庭向けの「電灯」と呼ぶ標準的な契約形態では、使用量に応じて3段階の単価が設定されているが、そのうち最も高い第3段階の単価(7月から29.57円)と比べてもさらに高い。
しかも夏季以外の月(10月〜6月)では午前7時〜午後11時までの16時間が「昼間」になる(図4)。このため年間を通じて昼間の使用量を減らして夜間の使用量を増やさないと、特に冬の電気料金が割高になってしまう。
この新料金プランを使うには継続的なピークシフト対策が不可欠だ。結局のところ、太陽光発電システムなどで昼間の電力をほぼ全量カバーできるような家庭でなければ利用するメリットはないと言える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.