企業向けに電力を販売できる「特定規模電気事業者」の中で最大手のエネットが、電力の需給状態に応じて変動する新しい料金プランを7月1日から開始する。同社から電力供給サービスを受けている大手企業が対象で、開始当初から10社以上が利用する予定だ。
いよいよ日本国内でも、電力の需給状態に合わせて料金が変動する新しいサービスが始まる。東京ガス、大阪ガス、NTTファシリティーズの3社が共同で出資するエネットが7月1日から、「EnneSmart(エネスマート)」の名称で企業向けに提供するサービスである。関東と関西の大手顧客が対象で、開始当初から王子製紙、三越伊勢丹、NTT西日本など10社以上が利用する予定だ(図1)。
エネットが開始する新サービスは「デマンドレスポンス」と呼ぶ仕組みを活用したもので、夏の昼間など電力の需要が供給量を上回ってしまう事態が想定される場合に、利用企業に対して使用量の削減に協力してもらい、その協力に対してインセンティブを支払う。
同様に関西電力も7月2日から大口顧客を対象に、デマンドレスポンスによって削減できる電力(「ネガワット」と呼ぶ)を入札方式で買い取るサービスを開始する。これと比べてエネットの新サービスはデマンドレスポンスを料金プランの中に組み込んでおり、利用企業にとってはコスト削減のメリットがより明確になる。
この料金プランの特徴は、電力の需給状態が厳しくなった緊急時に、単価が大幅に高くなる一方、逆に通常よりも使用量を削減した場合にはリベート(報酬)が支払われる点だ(図2)。しかも緊急時に変動する料金プランを利用する企業に対しては、通常の時間帯別の単価も安くする。協力する企業のメリットが大きくなるようにして、採用企業を増やす狙いである。
エネットは当初の利用企業の実績などをもとに、サービスの提供範囲を広げていく計画だ。顧客企業が電力使用量やデマンドレスポンスの状況を常に確認できるように、インターネット経由で最新情報を提供するサービスも始める(図3)。
エネットは電力を一般企業に販売できる「特定規模電気事業者」(PPS=Power Producer & Supplier)の中では最大の販売量があり、全国で7000以上の顧客に電力を供給してきた実績がある。デマンドレスポンスを組み込んだ新サービスの対象顧客を拡大する余地は大きい。エネットを含めてPPSは現在58社あり、他社が追随することも確実とみられる。
西日本における今夏の電力不足を契機に、デマンドレスポンスを活用したサービスが一気に広まりそうな情勢だ。
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