今夏の電力不足が心配される関西地区で、家庭の節電量を集積する実験が7月から始まる。NTTスマイルエナジーが「1kW LOVE」の名称で実施するもので、家庭のエアコンを遠隔で一斉に制御することによって、地域全体で電力のピークカットにつなげる狙いだ。
NTTスマイルエナジーが7月2日から9月28日までの約3カ月間にわたって関西地区で実施する節電プロジェクトは、「デマンドレスポンス」と呼ぶ新しいタイプの電力抑制策で、同社によると日本で初めての試みになる。夏の平日午後1時から4時の電力需要がピークに達する時間帯に、参加者に対して節電を依頼してピークカットを実現するものである。
今回の実験プロジェクトでは、電力不足が予想される時間帯に、リモコンを使ってエアコンの電源を一斉にオフにする。対象になる約300世帯の家庭には、エアコンの電源を遠隔から制御するためのリモコンと無線LAN機器のほか、消費電力量を測定するための電力センサーを無償で設置する(図1)。
NTTスマイルエナジーは経済産業省が発表する電力需給の見通しをもとに、電力不足が予想される数日前になると、プロジェクトに参加する家庭に対してメールで節電依頼の通知を送る。そして実際に電力不足の可能性が高まると、インターネットを通じて各家庭のリモコンからエアコンの電源を一斉にオフにして、電力のピークを抑制する。ただし家庭の中でエアコンの利用が必要と感じた場合には、リモコンを使って電源を入れることができる。
各家庭の電力使用状況はパソコンで確認することができ、過去2週間のピーク電力をもとに節電量の目標を設定して達成度をチェックする仕組みだ(図2)。
参加する家庭全体の節電量を合計した数字も見ることができ、個々の家庭による節電の積み重ねがどのくらいの電力削減効果をもたらすかを確認できる(図3)。各家庭でピーク電力を1kW(キロワット)減らすことができれば、1000世帯で1MW(メガワット)の電力削減につながる、というのがプロジェクトの目的である。
このようなデマンドレスポンスに協力した場合には、何らかのインセンティブを支払うのが海外では一般的だが、今回は実験のためインセンティブはなく、実施後のアンケートに対して謝礼を贈る形をとる。プロジェクトに参加した家庭ではデマンドレスポンスによって電力使用量を削減できた分だけ、電気料金が安くなる
NTTスマイルエナジーは3カ月間の実験による節電効果を検証したうえで、今年の冬以降に向けて本格的なサービスの検討を進める。同社はNTT西日本とオムロンが2011年6月に設立した新会社で、太陽光発電を使う家庭向けに電力の見える化サービスを提供している。今回の実験では太陽光発電を使っていない家庭を対象にする。
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