今からでも遅くない!オフィスの節電対策 −プリンタ編−省エネ機器

8月に入って、いよいよ夏の節電対策の効果が問われる本番を迎えた。日本中の企業や自治体、店舗や工場で節電対策に取り組んでいるが、見落としがちな対策のひとつにプリンタの節電がある。最近のプリンタには消費電力を大幅に低減する機能が組み込まれており、節電に有効だ。

» 2012年08月06日 07時20分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 オフィスの中で季節に関係なく電力を使い続ける機器はいろいろある。その中で最も電力使用量が大きいのは照明で、次がコンピュータやプリンタなどのOA機器である。特にOA機器の場合は、実際に使用していない時の節電対策が効果を発揮する。

 最近のOA機器の多くは、稼働していない時の消費電力を下げる機能が標準的に実装されている。オフィス向けのカラープリンタを例に、その節電効果を検証してみる。

印刷時の消費電力は空調並みに大きい

 一般的なオフィスで使われているプリンタと言えば、A3カラー対応の製品が主流である。その中でも特に節電対策が有効なレーザービーム方式のカラープリンタに焦点を当てることにする。

 オフィス向けのプリンタとしては、高速印刷が可能なレーザービーム方式と低価格なインクジェット方式の2種類がある。より多くのオフィスで使われているのはレーザービーム方式だが、印刷時の消費電力はインクジェット方式に比べて格段に大きい。

 最新の製品で比較すると、インクジェット方式の消費電力が20W程度と低いのに対して、レーザービーム方式の消費電力は1000W以上にもなる。特に消費電力が大きい空調機器でも、最近はオフィス向けで1000W程度の製品が出てきており、レーザービーム方式のプリンタの消費電力は意外に大きいことが分かる。

 そこでメーカー各社はプリンタの節電対策のひとつとして、印刷していない時の消費電力を大幅に引き下げる機能に力を入れている。印刷が完了した後に「スリープ」と呼ぶ状態に移行して、消費電力をわずか1〜3W程度の微小なレベルに抑える機能である(図1)。

 スリープ機能を設定しておくことによって、印刷していない大半の時間帯で消費電力をほぼゼロに近づけることができる。ただしスリープの状態から印刷できる状態に復帰するまでには一定の時間を要する。最新の機種でも10秒程度かかる。このため頻繁に印刷する用途では使いにくい。そのような場合にはインクジェット方式のほうが節電効果と利便性の両面で優れている。

図1 主要メーカー4社のオフィス向けA3対応カラープリンタ(レーザービーム方式)。印刷速度が毎分30枚の中位機種を選んだが、リコーだけはTEC値を公表している上位機種を示した

プリンタの電力使用量は「TEC値」で判断

 どの電気製品でも同じだが、カタログなどに書かれている消費電力の大きさは瞬間的な電力の使用量を表すものである。この消費電力に使用時間をかけ合わせて、1日あたり、あるいは月間や年間の電力使用量を計算することができる。

図2 消費電力の変化。出典:リコー

 特にプリンタは印刷中の消費電力が大きく、スリープや電源オフの状態で消費電力が非常に小さくなるため、印刷の頻度や間隔によって電力使用量は大幅に変わってくる(図2)。

 そこで標準的な利用状況を設定して、プリンタの節電能力を評価する国際的な基準値が決められている。「TEC値」と呼ばれるものだ。

 TECは「Typical Electricity Consumption」の略で、一般のオフィスにおける典型的な利用状況をもとに1週間分の電力使用量を算出したものである。一定の回数の印刷を平日の午前と午後に実行しながら、印刷の合間にスリープや電源オフの状態を加えて計算する。5日間の平日と2日間の休日を合わせた1週間で、どのくらいの電力使用量になるかの目安になる。単位は通常の電力使用量と同じkWh(キロワット時)で表す。

 最近のカラーレーザープリンタのTEC値を見ると、1〜4kWhと非常に小さい(1日の印刷回数は30回と想定)。これはスリープ状態の消費電力がほぼゼロに近いためだ。TEC値が1kWhだと月間の電力使用量は4〜5kWh程度で収まるため、プリンタ1台あたりの電気料金は企業向けの電力契約であれば月に100円以下になる。ただしスリープ状態へ自動的に移行するようにプリンタの動作モードを設定する必要がある。

 もう一方のインクジェット方式のプリンタにもスリープ機能はあるが、もともと消費電力が小さいので、それほど大きな節電効果は期待できない。TEC値を公表しているメーカーも少ない。インクジェット方式は電源を入れてから印刷できるようになるまでの時間が短いため、使うたびに電源をオフにすることが最善の節電対策になる。

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