「ゼロシナリオ」を国民が支持、再生可能エネルギーと省エネを重視法制度・規制

国のエネルギー戦略の方向性を決めるための“国民的議論”の結果がまとまった。国家戦略室が8月22日に公表した資料によると、7〜9割の国民が原子力発電を撤廃する「ゼロシナリオ」を支持するとともに、再生可能エネルギーと省エネを最も重視している。

» 2012年08月23日 15時54分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 2030年に向けたエネルギー戦略に関して、国民の意向が明確になった。この結果をもとに国家戦略室が中心になって専門家による総括を経て、「革新的エネルギー・環境戦略」を近く決定する。

 国家戦略室は原子力発電の比率によって3つのシナリオを提示して、国民の意見を集約する作業を進めてきた。全国11か所で意見聴取会を開き、並行してパブリックコメントを集めた結果、参加者の7〜9割が原子力発電の比率をゼロにする「ゼロシナリオ」を選択した。

 意見聴取会では実際に意見を表明した参加者の68%がゼロシナリオを支持し、会場でアンケートに回答した参加者のうち具体的にシナリオを選択した人の81%が同じくゼロシナリオを支持した(図1)。その理由として「原子力の安全に不安」を挙げ、「再生可能エネルギーの開発や省エネを急ぐべき」との意見が多数を占めた。

図1 意見聴取会における集計結果(赤枠内の数値は%)。出典:国家戦略室

 パブリックコメントにおいては、さらにゼロシナリオを選択する国民が多く、約7000人の回答者のうち「即原発ゼロ」が81%、「段階的に原発ゼロ」を加えると90%にのぼった(図2)。原子力発電による放射能汚染の恐怖を考えれば、当然の選択と言えよう。

図2 パブリックコメントの集計結果(数値は%、回答者は約7000人)。出典:国家戦略室

 一方で原子力発電の比率を15%あるいは20〜25%まで維持する「15シナリオ」や「20〜25シナリオ」を支持した参加者が意見聴取会では2〜3割いて、決して少なくない。その最大の理由は「コストが上がり、経済に影響が出て、雇用が失われる」という点である。

 再生可能エネルギーの拡大によって、電気料金の単価が大幅に値上がりすることは避けられない状況にある。企業にとっては収益への影響が懸念される。

 解決策としては、可能な限りの節電対策を実施して電力使用量を減らしながら、自社で発電・蓄電能力を高めることに尽きる。電気料金の単価が上がってもコストを抑制することは可能だ。2030年に向けた中長期の節電・発電・蓄電対策を、大企業も中小企業も早めに検討して実行に移す必要がある。

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