今すぐ始めよう!冬の節電対策 −北海道特別編−エネルギー管理

今年の冬は北海道の電力不足が心配されているが、火力発電所や本州連係線など複数のトラブルが同時に発生しない限り深刻な状況になることはないと想定されている。とはいえ効果的な節電対策を実施して、電力不足のリスクを可能な限り低減すると同時に、電気料金の削減を図りたい。

» 2012年10月29日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 全国を通じて夏と冬の節電対策で大きく違う点は、電力使用量がピークになる時間帯である。特に寒さが厳しい北海道では、夕方16時から夜20時にかけて暖房に使う電力が増加する。

図1 夏と冬の最大電力の変動。出典:北海道電力

 非常に寒かった2年前の2010年度の冬の最大電力を見ると、18時〜20時あたりにピークが来ている(図1)。オフィスや工場の営業・操業時間が延びて、家庭や店舗における暖房の増加と重なる時間帯だ。

図2 夏と冬の電力使用量の配分(1日あたり)。出典:北海道電力

 北海道の冬の節電対策の第1は、18時〜20時の電力をいかに少なくするかである。オフィスや工場の営業・操業時間を早めて18時までに終了できれば、ピーク電力を抑制する効果は大きい。それが難しい場合でも、18時以降は室温を確認しながら暖房を弱めるなどの対策を実施したいところだ。

 北海道の冬の電力使用量を用途別に見ると、家庭用と融雪用、業務用と産業用で、ほぼ半分ずつを占めている(図2)。このうち鉄道や道路などの融雪に使う電力を削減することは難しいため、家庭と企業の双方で節電対策に取り組むことが重要になる。

自家発電や需給調整でピークシフトを

 そこで注目したいのが自家発電による供給力の増強だ。特にガスコージェネレーションシステムを導入すると、発電と同時に熱を作り出して暖房や給湯にも利用できる。夜間の電力使用量を削減するうえで極めて効果的である。

図3 自家発電によるピークシフト。出典:北海道電力

 さらに自家発電を活用したピークシフトを実施できると、18時〜20時の電力使用量を抑制することが可能だ。例えば工場などで深夜に自家発電設備を動かして電力や熱を作り、それをピークの時間帯に振り向ける(図3)。あるいは家庭でも蓄電池とガスコージェネレーションのエネファームを組み合わせて使えば同様のことが可能になる。

 実際に自家発電設備を導入するとなると、初期コストがかかるほか、運用の手間も考えなくてはならない。それでも電気料金を削減できることでコストの回収は可能であり、何と言っても地域全体の電力不足を回避するために貢献できる点は大きい。

 以上のような対策を数多くの企業や家庭が実施することで、電力不足のリスクは確実に下がっていく。さらに企業を対象にした需給調整契約を北海道電力が促進中だ。いくつかの契約形態が用意されていて、そのうちの1つが「計画調整契約」と呼ばれるものである(図4)。

 あらかじめ日時を決めて電力使用量を抑制する契約を北海道電力と結ぶことにより、電気料金の割引を受けることができる。北海道電力は今年の夏と同程度の契約件数を見込んでいるが、ぜひ大幅に増えることを期待したい。このほかにも、電力不足のおそれがある場合に使用量の削減に協力する「随時調整契約」などがある。

図4 計画調整契約による需要削減量の見込み。出典:北海道電力

需給見通しには余裕がある

 北海道全体で節電対策に取り組めば、たとえ原子力発電所が稼働しなくても、今年の冬に電力不足になる可能性はゼロに近いと言ってよいだろう。というのも、北海道電力の需給見通しは需要を大きめに見込みながら、供給面では複数のトラブルが同時に発生するリスクを想定しているからだ。

 需要の見込みに関しては例年以上に寒かった2010年度の実績をベースに、節電、景気、気象の3つの要因から算出している(図5)。このうち節電率は需要に対してわずか3%の低さになっているが、実際にはもっと高くなるだろう。

図5 北海道電力による電力需要の想定値(単位:万kW)。出典:北海道電力

 さらに気象条件は2010年度より良くなる見通しを立てながらも、最終的な想定値(H1)では安全を見て2010年度と同等の需要を想定した。加えて過去5年間の平均も加味して需要を1.1%上積みしている。

 こうして1月〜3月の最大電力を563万kWと想定した。1年前の2011年度の最大電力と比べて5万kW少ないレベルである。比率にして約0.9%の減少だ。一方で供給力は2月に596万kWに低下して、需要に対する予備率が5.8%まで下がると予想している(図6)。

図6 北海道電力による12月〜3月の需給予測。出典:北海道電力

 予備率が3%を切ると停電の危険性が高まるが、5.8%だと余裕がある。九州では2月の予備率が3.1%まで低下すると予測されており、北海道のほうが心配ないように思える。ただし火力発電所などのトラブルが発生した場合のバックアップが他の地域よりも少ないことから、電力不足のリスクが高いとみられているわけだ。

 万一の場合を想定して可能な限りの対策をとることは重要である。実際の需給状況には余裕があるものの、きめ細かく節電対策を実施することでリスクをゼロに近づけることができる。そのうえで北海道の電力が安定して供給されることを願いたい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.