東京湾に面して火力発電所が立ち並ぶ千葉県は、国内で最大級の電力供給基地になっている。さらに最近では半島をめぐる長い海岸線に沿って風力発電所が増えてきた。注目の洋上風力発電プロジェクトも始まり、新旧を合わせたエネルギーの供給量がますます拡大していく。
再生可能エネルギーの供給量に限れば、千葉県は全国で36位にとどまる(図1)。その中で規模が最も大きいのは風力発電で、関東では茨城県に次いで2番手だ。一方で旧来型の火力発電では、愛知県と1位、2位を争う巨大な規模を誇っている。
千葉県の東京湾岸には大規模な火力発電所が5か所もあって、出力を合計すると1700万kWという膨大な電力を作り出すことができる。どのくらいの規模かと言えば、1MWの太陽光発電所(メガソーラー)が1万7000か所も必要になるほどだ。この5つの火力発電所から、東京電力が関東一円に供給する電力の約3割を送り出している。
5つの中で規模が最大の「富津火力発電所」(図2)の出力は504万kWあり、最先端の発電技術が実装されている。「コンバインドサイクル発電」と呼ばれる方式で、ガスタービンで発電する時に出る蒸気を使って再度発電する2段階の発電方式である。
この方式ではタービンに取り込むガスの温度が高いほど、蒸気による発電量が多くなる。富津火力発電所では現時点で最高レベルの1500度の高温ガスを使ったコンバインドサイクル発電の設備が稼働中だ。
通常の火力発電ではガスから電力に変換できる効率が40%程度であるのに対して、約1.5倍の59%という高いエネルギー効率を実現している。その分の燃料費を節約できるのと同時に、CO2排出量を低減できるメリットも大きい。
こうして火力発電の技術革新が進む一方で、風力発電の領域でも新しい技術が導入されている。千葉県の面積の大半は房総半島が占めており、長い海岸線があるため、風力発電にも適している。実際に半島をぐるりと囲むように風力発電所が建設されていて、すでに10の市町村に広がっている(図3)。
最も規模が大きいのは太平洋側にある「銚子風力発電所」で、発電能力は13.5MWと国内でも有数だ。そのほかに1MWを超える風力発電所が県内に15か所ある。まだ火力発電の規模には遠く及ばないものの、CO2を排出しないクリーンエネルギーの供給源として重要性が高まっている。
中でも注目を集めているのが、国内では実例が少ない洋上風力発電の実証実験だ。銚子市の沖合3キロメートルの海上に、巨大な風車が建てられている(図4)。この風車は設備を海底に固定する「着床式」で、海面から風車の最上部までの高さは126メートルに達し、1基で2.4MWの発電が可能になる。
この洋上風力発電所は東京電力がNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)や東京大学と共同で取り組んでいるもので、2013年1月から運転を開始する計画だ。発電した電力は海底の送電ケーブルを通って東京電力の配電網に送られる。発電設備の近くには「風況観測タワー」も設置して、風や波の状況のほかに、生物など自然環境への影響も検証することになっている。
2014年版(12)千葉:「東京湾岸にメガソーラーが続々誕生、砂利採取場も最終処分場も発電で稼ぐ」
2013年版(12)千葉:「洋上風力とメガソーラーが東京近郊に、大規模なバイオマス発電所も加わる」
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