発電設備の実力を示す「設備利用率」キーワード解説

再生可能エネルギーの固定価格買取制度を利用するときは、売電収入をある程度見積もっておくことが大切だ。売電収入、つまり発電量は発電施設の「設備利用率」を参考にすれば、大体見積もれる。

» 2012年11月30日 13時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 設備利用率とは、発電設備の最大出力値に対して、実際に発電した発電量の比率を表す指標。「稼働率」と呼ぶことも多い。発電設備をフル稼働させ続けた場合の発電量と、実際の発電量の比率とも言える。

 この値が高ければ、設備を有効に使えているということになる。火力発電所や原子力発電所など、人間の手で起動、停止させる発電施設の場合、メンテナンスなどで停止させていた期間が大きく影響する。

 一方、太陽光発電や風力発電、水力発電などといった設備の場合は、稼働状況が自然現象によって変化し、人間の手で制御できる余地が少ないため、場所や気象条件によって値が変化する。

 発電設備の設備利用率は、以下の計算式で求められる。

総発電量(kWh)÷(経過時間 × 設備の最大出力値(kW))×100

 例えば2012年11月28日にお伝えした枕崎空港を利用したメガソーラーの場合、最大出力が8550kWで、年間発電量を986万kWhと見込んでいる。1年間稼働させた場合の設備利用率を計算すると以下のようになる。

986万kWh ÷(24時間 × 365日 ×8550kW)×100

 答えは13.16%となる。つまり、メガソーラーが8550kWでフル稼働し続けたとしたら、1年間のうち13.16%の期間しか稼働しないという計算だ。再生可能エネルギーを利用した発電設備の中でも、太陽光発電は、太陽が出ていなければ発電しない、悪天候の場合は発電量が落ちるという性質があるため、どうしても設備利用率は低くなる。

 国家戦略室の「コスト等検証委員会」では、さまざまな発電方式の発電コストを試算している。試算の根拠となる設備利用率は事業者への調査や発電実績データなどから設定しているので、おおよその目安と見ることができる。コスト等検証委員会が設定した設備利用率は、太陽光発電が12%、陸上風力発電が20%、洋上風力発電が30%、小水力発電が60%となっている。

 このデータを利用すれば、大体の年間発電量を見積もれる。例えば最大出力が1000kWのメガソーラーなら、24×365×0.12×1000で、105万1200kWとなる。1kW当たりの買取価格である42円を乗算すると、4415万400円の収入を得られるという計算になる。

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