電力自給率100%を目指す淡路島、風力から太陽光・バイオマスまで日本列島エネルギー改造計画(28)兵庫

近畿6県の中で再生可能エネルギーの導入が最も活発なのは兵庫県だ。太陽光・風力・バイオマスによる大規模な発電設備の建設が続々と始まっている。中でも最先端を行くのが淡路島で、2050年までに電力の自給率100%を実現する構想が着々と進む。

» 2013年01月17日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 兵庫県は隣の大阪府と比べると面積が4倍以上あり、山や川が多く、海岸線も長い。再生可能エネルギーの導入量も2倍近い規模になっている。特に太陽光発電は愛知・埼玉・静岡に次いで全国で4番目の導入量だ(図1)。

図1 兵庫県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 ここ1、2年でも県内の各地で新しい発電設備の建設計画が相次いでいる。太陽光だけではなく風力やバイオマスを含めて幅広い資源を活用する動きが広がってきた。そのモデルケースと言える取り組みが瀬戸内海で最大の島、淡路島で進んでいる。

 2011年12月から始まった「あわじ環境未来島構想」のもと、再生可能エネルギーによる電力供給ネットワークを拡大する注目のプロジェクトがある。この構想によって計画を開始した時点で8%だった島内の電力自給率を2020年に20%へ、最終的には2050年までに100%を目指す(図2)。

図2 「あわじ環境未来島構想」によるエネルギー自給に向けた目標。出典:兵庫県、洲本市、南あわじ市、淡路市

 すでに淡路島では大規模な発電設備がいくつか稼働している。その中で最も規模が大きいのは島の西端にある「CEF南あわじウインドファーム」だ。15基の大型風車によって37.5MW(メガワット)の電力を作り出すことができる日本で最大級の風力発電所である。

 風力発電では島の北端でも、関西電力が12MWの「淡路風力発電所」を2012年12月に運転開始している。さらに島の西側の洋上にも風力発電所を建設するプロジェクトが検討段階にある(図3)。

図3 「あわじ環境未来島構想」の取り組み状況。出典:兵庫県、洲本市、南あわじ市、淡路市

 このほか淡路市みずからが1MWの「あわじメガソーラー1」(図4)を建設して、太陽光発電の導入拡大を推進している。同じ淡路市では兵庫県が保有する土地に7MW、隣の洲本市では大阪ガスグループが9MWのメガソーラーを建設する計画が進行中で、2013年から2014年にかけて稼働する予定だ。

図4 「CEF南あわじウインドファーム」(左)と「あわじメガソーラー1」(右)。出典:クリーンエナジーファクトリー、淡路市総務部

 淡路島ならではの試みとしては潮流発電にも注目が集まる。島の周囲には潮の流れが速いことで有名な明石海峡や鳴門海峡がある。このうち明石海峡では三菱重工業が潮流発電の事業化調査を開始することが決まっている。まさに「環境未来島」と呼ぶにふさわしい状況ができつつある。

 一方で兵庫県全体ではバイオマスの取り組みが広がっている。2005年度から「兵庫県バイオマス総合利用計画」を開始して、食品を中心とした廃棄物の再利用を進めてきた。その中で先進的な取り組みを「ひょうごバイオマスecoモデル」として公表しており、2010年度までに50件の事例が登録されている(図5)。

図5 「ひょうごバイオマスecoモデル」の取り組み状況。出典:兵庫県農政環境部

 県内には山林も多く、バイオマスの中でも未利用の木材による「木質バイオマス」の可能性が大きく残っている。兵庫県は2012年度〜2020年度の9か年計画を新たに策定して、木質バイオマスを重点的に拡大中だ。現在は未利用の間伐材のうち37%が燃料などに再利用されているが、2020年度には75%に引き上げることを目標にする。

 木質バイオマスによる発電プロジェクトの先進事例になっているのが兵庫パルプ工業の取り組みである。建築の廃材を燃料にしたバイオマス発電を1993年から開始して、現在では2基の発電設備で合計58MWの電力を供給することができる(図6)。木質バイオマス発電では国内有数の規模を誇る。

図6 兵庫パルプ工業のバイオマス発電。出典:兵庫パルプ工業

 兵庫県を地図で見ると、北側が日本海、南側が瀬戸内海に面し、中央には中国山脈の東端にあたる山間部がある。この海と山がもたらす豊富な資源を最大限に活用した再生可能エネルギーが県内の全域に広がる勢いになってきた。

2014年版(28)兵庫:「太陽光や風力から潮流発電まで、エネルギーが持続する環境未来島へ」

2013年版(28)兵庫:「ため池や田んぼでも太陽光発電、2020年までに100万kW創出」

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