発電システムの運用に欠かせないポイント(1)企画・立案、設計太陽光発電の事業化を成功させるために(2)(1/3 ページ)

太陽光発電分野の最近の動向について紹介した前回に続き、第2回以降では発電システムの導入を進める上で、プロセスごとに注意すべきポイントについて詳しく解説する。最初に必要なことは「企画・立案」と「設計」である。

» 2013年03月08日 15時00分 公開
[中里啓/UL Japan,スマートジャパン]

第1回:「太陽光発電の最新動向」

 太陽光発電システムの導入は「企画・立案」から始めて、運転開始後の「維持管理」の方法を策定するまで、きちんとステップを踏んで進めることが重要である(図1)。今回は上流部分の「企画・立案」と「設計」に関して説明していこう。

図1 太陽光発電システムの導入プロセス

目的の明確化、用地選定、現地調査:

 太陽光発電システムを導入する前に、その目的を関係者で共有しておく必要がある。固定価格買取制度を活用した売電(投資)を目的とすること以外にも、遊休地の有効活用、環境啓蒙活動、ピークカット、防災対策など、さまざまな導入目的が存在することが予想される。事業の開始・継続・撤退などの判断基準を行う上でも、関係者のあいだで十分な検討と合意形成が重要になる。

 用地の選定から始める場合には、現地調査を通じて、年間を通じて日射量が多いこと、受光障害(日陰になる要因)が少ないことなどを確認するとともに、適用される条例、使用制限などの条件の有無も確認しておく必要がある。

売電収入の算出:

 太陽光発電事業を行う上で、売電収入の算出式を理解し、変動要因を把握しておくことも重要である。売電収入の概算は以下で算出できる。

 [A] 売電収入(円) = [B] 買取価格(円/kWh) × [C] 出力(kW) × [D] 時間(h) × [E] 設備利用率(%)

 ここで、Bは2012年度では42円/kWhで一定であり、Dは1年間であれば8760時間(24時間×365日)であり、原則変動しない。これに対してCは太陽光モジュールとパワーコンディショナー(PCS)の効率や経年劣化、そのほか発電システム内でのロス(送電や昇圧による)により変動する。

 Eはフルに発電できた場合と実際の発電量の割合で、日本国内でも立地によって幅があるが13〜14%程度である(一般的には、昼をはさんで前後3時間は晴天であれば良い立地であると言える)。これらに加えて、Eには保守・点検、出力調整などによる運転停止も考慮する必要がある。

 上記の算式に、1000kW(1MW)の太陽光発電所を当てはめてみると、1年間で4800〜5000万円ほどの売電収入を得られる計算になる。より詳細な採算性を検討するためには、CとEに関して季節ごとの環境条件などによる経年・経時変化を売電期間にわたって勘案して算出することになる。

日射量、発電量の予測:

 発電量の予測は上述の算式で、[C]出力(kW)×[D]時間(h)×[E]設備利用率(%)の部分に該当する。これらの変動要因を分析・積算することで予測値が得られる。Dは一定なので、CとEに関して主に以下の変動要因を検討することになる。

  • 日射量の予想値
  • 受光障害の要因
  • ロスの要因

 日射量の予想値はNEDOのホームページ(NEDO日射量データベース)からダウンロード可能なデータベース(年間日射量データベース:METPV-11、および年間月別日射量データベース:MONSOLA-11)をもとに算出されることが多い。より詳しいデータを入手したい場合には、現地で日射量調査を実施することも検討すべきである。

 上記のようなデータベースでは、受光障害が考慮されていないので、実際の用地に適用する場合には、受光障害を検討する必要がある。受光障害は具体的には、山陰、樹木の影、建物の影、煙突・電柱・鉄塔の影、砂塵などであり、これらにより太陽光モジュールの受光面に日陰が生じ、発電量を低下させる要因となる。

 発電量の予測は上記のような受光障害を考慮した日射量の予想値をもとに、発電システム上のロスの要因を考慮して算出する。市販のソフトウェアでは「PV-SYST」などが多く利用されている。事業者にとっては採算性を左右する重要な要素になるので、EPC (Engineering、Procurement、Construction) 業者と十分に協議することが望ましい。

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