第1回:太陽光発電の最新動向太陽光発電の事業化を成功させるために(1)

昨年7月1日に開始された再生可能エネルギーの固定価格買取制度が予想を上回るペースで広がっている。2013年末には2万件を超える太陽光発電所が日本全国で運転を開始する見込みだ。“太陽光発電所が乱立する時代”になってきたが、事業化にあたっては注意すべき点が数多くある。

» 2013年02月25日 13時00分 公開
[中里啓/UL Japan,スマートジャパン]

 固定価格買取制度における2012年11月末時点の設備認定件数は18万7297件(設備容量3648MW)にのぼっている。その中で非住宅用(出力10kW以上)の太陽光発電は2万1219件(2535MW)を占め、すでに運転を開始しているものが約半分の1万138件(369MW)になった。

 太陽光発電所の工期を6〜9か月程度と想定すれば、2013年末には2万件を超える太陽光発電所が日本全国で運転を開始することが見込まれる。まさに“太陽光発電所が乱立する時代”の到来である。

 発電事業ではデベロッパー、商社、設計・施工(EPC)業者、金融機関などが参入するケースが多いが、非住宅用の太陽光の場合、太陽光発電モジュールメーカー自身が建設業者や事業者として参画するケースが数多く見られる。これらに加えて、海外のデベロッパーや金融機関も参入し始めている。

 日本は元来、平坦な土地が少ない。固定価格買取制度が開始された昨年7月1日以降、日射量が多くて、送電線へのアクセスが便利で、しかも平坦で広い土地、に対する需要が急速に高まってきた。土地の取引価格も高騰している。

 こうした土地の問題に加えて、送電網の容量にも一部で問題が出てきており、経済産業省は昨年12月に北海道電力に対して、送電網の容量を高める要請を出したほどである。

発電モジュールの保証に対する統一規格がない

 その一方で事業者からは、固定価格買取制度が適用される20年間にわたって、太陽光発電モジュールメーカーが存続し、部品交換などの保守サービスを提供し続けられるのか、という点に大きな関心が寄せられている。

 現在販売されている太陽光発電モジュールの多くが20年以上の保証をうたっているが、メーカー独自の基準に依存するものであり、統一された基準は存在していない。こうした中、モジュールメーカーなどの品質保証体制を検証する規格として「JIS Q 8901」が制定され、ユーザー保護の観点から普及していくことが期待されている。

 固定価格買取制度によって太陽光発電システムは住宅用途から産業用途へ、利用範囲が拡大し、システムの高電圧化も進んでいる。これに伴い、太陽光発電モジュールの内部回路と接地されているフレームとの電位差による電流の漏れ、あるいは温度・湿度などの周辺環境による影響から、モジュールの「性能劣化」の事象が数多く生じるようになってきた。

 この現象は「PID(Potential Induced Degradation)」と呼ばれる。PIDに関しては、次回以降で詳しく解説する。

第2回:「発電システムの運用に欠かせないポイント(1)企画・立案、設計」

著者プロフィール

中里 啓(なかざと さとし)

UL Japan 営業部門 アカウントマネージャー。 総合商社で国内・海外の大型発電所のEPC、IPPプロジェクトなどを経験した後、外資系の半導体・フラットパネルディスプレイ・太陽電池の製造装置メーカーで太陽電池業界との関わりを深める。現在は太陽光発電をはじめ、エネルギー関連のサービス提供に従事。


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