日本海でもメタンハイドレートの調査開始、海底の浅い部分にある「表層型」電力供給サービス

3月に三重県沖で世界初の産出試験に成功したメタンハイドレートの開発が日本海側でも始まった。新潟県の上越沖と石川県の能登半島西方沖の2か所を中心に、海底から浅い場所にある「表層型」と呼ばれる種類のメタンハイドレートの潜在量を3年間かけて詳しく調べる。

» 2013年06月11日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 将来に向けて国産の天然ガスと期待されるメタンハイドレートの開発が着々と進んでいる。太平洋側に比べて潜在量の調査が遅れている日本海側でも政府の主導による本格的な調査が始まった。

 上越沖と能登西方沖の2か所を対象に、調査船から発信する音波を使って海底直下の地質構造を調べる(図1)。6月8日に調査船の「第七開洋丸」が新潟県を出港して約1か月半にわたる地質調査を開始した。

図1 地質調査を実施する海域。出典:資源エネルギー庁

 メタンハイドレートはメタンと水が結晶化した氷状の物質で、加熱あるいは減圧することによってメタンガスと水に変わる。日本近海の海底に膨大な量の存在が見込まれていて、特に太平洋側の愛知県沖から三重県沖に広がる「東部南海トラフ」が有望視されている(図2)。このトラフ(海溝)で3月に世界で初めてメタンハイドレートの産出試験に成功したことは記憶に新しい。

図2 日本近海のBSR(海底疑似反射面)の分布状況。BSRはメタンハイドレートが存在することを示す。出典:石油天然ガス・金属鉱物資源機構

 一方、日本海側でもメタンハイドレートの存在は確認されているものの、これまで開発は遅れていた。というのも、メタンハイドレートは海底のどの地層に含まれるかによって2種類に分けられ、それぞれで採掘の難易度が違う。

 太平洋側のメタンハイドレートは水深が1000メートル程度の海底から数百メートル下にある砂層に含まれていることが多く、「砂層型」と呼ばれている(図3)。これに対して日本海側では水深が500メートル程度の海底のすぐ下の層に含まれる「表層型」が多い。

図3 砂層型のメタンハイドレートの掘削方法。出典:資源エネルギー庁

 一見すると表層型のほうが採掘は簡単なように思われるが、表層にあるため採掘時に自噴してガスに変化してしまい、回収することが難しい。砂層型と比べて採掘方法の研究・開発が進んでいない状況だ。

 当面は日本海側の潜在量を詳しく調査しながら、採掘方法の研究・開発を進めることになる。調査の主体になる資源エネルギー庁は2015年までの3年間をかけて、上越沖と能登西方沖を中心に広い海域で資源量の調査を実施する。調査船を使って音波による探査を7月20日まで続けた後、さらに海底近くまで潜航できる無人の自律型巡航探査機で地質を詳しく調べる。

 政府は国家戦略としてメタンハイドレートの商業生産を急ぐ計画で、2018年度をメドに採掘方法を含む技術基盤の確立を目指す。2020年代の半ばには民間企業が商業生産を開始できるようにすることを目標にしており、太平洋側の砂層型と日本海側の表層型の開発を並行して進める方針だ。

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