1万回の充放電が可能な小型リチウム電池、ドイツの研究所が開発蓄電・発電機器

ドイツのZSW研究所は、産業用として大量に使われている18650型のリチウムイオン蓄電池を開発した。1万回の充放電後に容量が85%残るという優れた性質を示す。研究所によれば、小型機器はもちろん、電気自動車用の蓄電池に向くという。

» 2013年06月18日 15時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 太陽電池や再生可能燃料、蓄電池などを研究開発するドイツの研究所が、新世代の小型リチウムイオン蓄電池を開発した(図1)。現在のリチウムイオン蓄電池は数千回の充放電を繰り返すと、容量が初期の7割以下になってしまう。これをサイクル寿命と呼ぶ。

 新開発の電池は、1万回の充放電後にも充電できる容量が85%残っていた。つまり、現在の標準的なサイクル寿命の定義に従えば、1万回を大きく上回る寿命があるといえる。

図1 新開発のリチウムイオン蓄電池。18650型である。出典:ZSW

 電池を開発したのはドイツZSW研究所(バーデンヴュルテンベルク州太陽エネルギー水素研究センター、Zentrum für Sonnenenergie- und Wasserstoff-Forschung Baden-Württemberg)。ウルム市など3カ所に施設を構える。

 今回の研究成果はリチウムイオン電池セルの中にあるいわゆる電極、正確には電子を受け渡す活物質の研究から生まれた。電池容量を30分で充放電する「2C」という比較的厳しい条件下でテストしたところ、1万回という寿命を確認できた。今回の研究成果が優れているのは、単にサイクル寿命が長いだけではない。例えば、電池の重量当たりに出力できる電力を表すパワー密度の値は、1100W/kgだ。これはハイブリッド車に採用できるほど高い値ではないが、電気自動車であれば利用可能だ。

 今回の成果は18650型と呼ばれる産業用の電池セルで実現した。18650型の製造は半自動化されており、活物質の製造から封止までが行える(図2)。

図2 活物質の混合装置。出典:ZSW

 ZSW研究所は今後、大型のラミネート型電池セルや、大型の角形電池セルをパートナー企業と共同で開発していく予定だ。同研究所のHead of the Accumulator Material Research Department in UlmであるMargret Wohlfhahrt-Meherens博士によれば、大型セルへのアップスケールは基本的に可能だという。「サイクル寿命が長いということは、カレンダー寿命(保存期間)が長いともいえる。これは電気自動車など10年以上電池を交換しない用途に適している」(Wohlfhahrt-Meherens博士)。

 今回の研究資金を提供したのはドイツ連邦教育研究省(BMBF)とドイツ連邦経済技術省(BMWi)である。

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