30%の省電力と節水を実現、京王電鉄が13種類の設備を事務所に導入スマートオフィス

京王電鉄は東京に新設する事務所で省電力と節水を実現するため、太陽光発電の他、照明、空調、給湯、トイレなどに工夫を凝らした。LED照明やヒートポンプ式給湯器など導入しやすい設備など、合計13種類の設備を複合的に組み合わせて効果を高めている。

» 2013年06月27日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 高幡不動駅の位置

 京王電鉄は鉄道で働く自社社員に向けた事務所を建設中だ。2013年6月29日の完成を前に、省エネ設計の具体的な内容を公開した。実証実験ではなく、鉄道現業の事務所である。

 同社が建設するのは京王線高幡不動駅(東京都日野市)敷地内の事務所(図1)。運転手や車掌が勤務する高幡不動乗務区と、設備管理を行う従業員のための施設管理所を統合し、新設した事務所「高幡不動乗務区・施設管理所」だ。約280人が利用する。

 図2に完成直前の事務所の外観を示した。京王建設が設計し、交建設計が設計監理を進めた。施工は清水建設である。鉄骨造、地上4階建ての事務所であり、延床面積は3037.1m2だ。

図2 高幡不動乗務区・施設管理所。出典:京王電鉄

13種類の設備を組み合わせた

 省エネ設計の結果、意識的な節電をしなくても、従来の施設と比べて消費電力量を約30%低減できる。水の使用量も抑えられる。

 省エネ・節水を実現するために、13種類の設備を組み合わせた。「事務所に設備を複合的に取り入れたことが特徴だ」(京王電鉄)。導入した設備は大きく、発電、照明、空調、給湯、トイレに分かれる。

 発電と照明では5つの設備を導入した(図3)。20kWの太陽光発電システムから得た電力は売電せず、事務所内で利用する。日照の方向に合わせて羽根の角度を変えられる省エネブラインドを用いることで、消費電力を約33%削減できるという。

図3 導入した発電設備と照明設備。出典:京王電鉄

 空調、給湯、トイレには8つの設備を採用した。特徴は全熱交換換気設備を導入したことだ。建物の空調効率を最大限に高めようとすると、換気を全く行わない方がよい。例えば冬季であれば換気によって暖かい空気が外部に逃げ、冷たい空気が侵入するからだ。だが、換気を行わないと二酸化炭素(CO2)や有害化学物質が室内に蓄積してしまう。そこで、換気をしつつ逃げる熱量を減らす仕組みが必要だ。これが全熱交換換気設備の役割である。排気の持つ熱量をいったん貯え、給気に受け渡すことで逃げる熱量を減らす。

 この他、熱伝導や赤外線による熱放射を防ぐペアガラスや、ヒートポンプ式給湯器、太陽熱温水器などを組み合わせた。

図4 空調設備、給湯設備、トイレの設備。出典:京王電鉄

 なお、京王電鉄は列車自体の省エネにも取り組んでいる。例えば、1車両が1kmを走行する際に必要な運転電力量を約45%削減できる技術を全ての営業列車に導入済みだ。「VVVFインバータ制御装置」と「回生ブレーキ」である。この他、二酸化炭素排出量を約65%削減可能な「環境配慮型変圧器」や水の使用量を約50%削減できる「節水型車両洗浄装置」を導入済みだ。

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