米Johnson Controlsは世界10カ国の3000人に対してビルのエネルギー効率向上に関する調査を行った。エネルギー効率を高めようとする関心や意思は高まっており、効果が上がっていることも分かった。ただし、各国固有の課題も存在する。
「エネルギー削減目標を持つ企業の3分の2に、グリーン認証やゼロエネルギービルを実現する計画がある」。ビルのエネルギー効率に関して、世界10カ国に散らばる約3000人の意思決定者に質問した結果だ。
ビルのエネルギー効率化ソリューションなどを提供する米Johnson Controlsは、2013年6月に第24回北米エネルギー効率フォーラムで「第7回ビルのエネルギー効率に関する調査」の内容を発表した。冒頭の内容で分かるように、ビルのエネルギー効率向上に関する意欲は高い。
今回の調査は北米や西欧中心のものではない。北米(米国、カナダ)の600人、西欧(イギリス、フランス、ドイツなど)の929人以外に、ブラジルの233人やインドの381人、中国の362人、シンガポールの202人、オーストラリアの301人から回答を得ているからだ。つまり、ビルのエネルギーに関する目標はある程度、世界に共通したものだといえる(図1)。特にオーストラリアと中国、インドの意思決定者がエネルギー効率を重視している。
ビルのエネルギー管理や効率を意思決定目標の上位に置く企業や組織は2010年比で14ポイント増加している(図2)。これも世界的な傾向だ。調査結果から分かったことは、それにもかかわらずエネルギー効率に対する取り組みが2極化していることだ。
使用エネルギー削減目標を数値化していた世界の企業は2010年には58%だったが、2012年には73%まで増えている。エネルギー削減、または発電に関して何らかの目標を持った企業や組織は、そうでない企業と比較して、50%以上も高いエネルギー効率向上や再生可能エネルギー導入に成功している。エネルギーの削減目標自体も過去6回の調査と比較して最大になっていた。
エネルギー効率や削減幅について目標値を公開していた企業や組織の72%がそのための投資拡大を予定しており、約3分の1が外部資金を活用しようとしている。
各国の回答者に共通していた点がもう1つある。政府の施策がエネルギー効率向上に効果的だと言うことだ。優遇税制はもちろん、奨励金や補助金、低利の融資制度が「アメ」として役立つ。「ムチ」もある。建築基準法や建築基準をエネルギー効率に関してより厳しくすることの他、ビルのエネルギー性能についての情報開示を義務化することだ。
これが逆方向に働いてしまっているのが米国だ。米国では意思決定者の41%がエネルギー効率に関する投資を削減している。これは政府の予算編成や税制改革に対する不透明感によるものだ。エネルギー効率を高めたいという目的意識はあるものの、政府の施策とかみ合っていない(図3)。
米国はビルのエネルギー効率向上に関する認知度が高く、技術的な専門知識もあり、削減効果に不確実性がそれほど大きくないにもかかわらず、資金不足がエネルギー効率化実現の障害になっている。米国とは逆のパターンにあるのが、ブラジルやインドだ。
今回の調査は日本企業がエネルギー効率向上を目的として、海外市場で事業を拡大する際にも役立つ情報だろう。
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