交流から直流へ変えると8%も効率が上がる、2025年には2.3GWが直流に電力供給サービス

送配電技術に期待されるのは信頼性と容量、損失の少なさだ。このうち損失をさらに低くする技術として期待が掛かるのが直流送電だ。直流送電には既に大規模な事例もあり、2025年には2013年比で12倍にも成長するという。

» 2013年07月02日 15時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 電流には常に一方向に流れる直流と、1秒間に50回から60回、方向が変わる交流がある。どちらでもエネルギーを送ることができるものの、送配電では交流が主流だ。

 現在の送配電網では、火力発電所、水力発電所で発電した交流を変電所で例えば50万Vもの高電圧に変え、送電し、別の変電所などで順次低い電圧に変えていき、家庭では100Vの交流を受けている。これは交流の場合、電圧が高ければ高いほど損失が減るからだ。電圧を10倍に高めると、損失が100分の1に減る。

 ここまでは現在の送配電側の状況だ。米Navigant Researchの調査レポートによると、商用や家庭用の電力の8割は交流ではなく、直流で使われている。ノートPCやタブレット、LED照明はもちろん、テレビや洗濯機(のモーター)などは直流で動いている。それぞれの機器の内部には交流から直流を得る変換器が入っているのだ。

 利用時には直流を使うが、送配電は交流の方が効率的だ――これがこれまでのインフラの考え方だ。しかし、これが徐々に崩れつつある。第1段階は、データセンターだ。多くのデータセンターは交流を得て、UPS内部で直流に変換、再度交流に変換してサーバに送り、サーバの筐体内部で直流に変換してこれを利用していた。何回も直流交流を変換しており、そのたびに損失(熱)が発生する。これであれば、最初に受けた交流を直流に1度だけ変換し、その後は直流を使えばよいことになる。いわゆる高電圧直流(HVDC)送電だ。

 第2段階は、大規模な送配電も直流で進めるという考え方だ。Navigant Researchの主席調査アナリストであるPeter Asmus氏によれば、「直流送配電機器が主流になるには幾つかの神話があばかれなければならないだろう。その1つに、直流が交流よりも効率的だとしても、それはほんの1〜2%であるという誤解である。実のところ、ローレンス・バークレー国立研究所の調査によれば、中電圧の直流網は交流に比べて7〜8%も効率的である」という。

 高圧直流送電には実績がある。例えばスイスABBは、中国の向家ダムから上海までの1980kmの送電を直流送電で実現した。効率は93%と高い上に、最大7200MWもの電力を送電できる(図1)。これは日本国内に置き換えると九州から北海道までの距離に相当する。海中の送電も可能だ。同社は北海にある洋上風力発電所(400MW)とドイツ国内を直流送電で結んだ。

図1 スイスABBが国内で展示した直流送電の実績

 このような直流送電の動きは巨大プロジェクトに限られるものではない。Navigant Researchによれば、世界の直流送配電の容量は、2013年の196MWから、2025年には2.3GWを上回る規模に成長するという。

 なお、同社によれば、直流送電技術は、1000V以上の高電圧か、100V以下の低電圧の領域で進んでおり、今後は、380〜400Vのマイクログリッドに向けた技術革新が必要だという。

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