電力の世界を二分する「直流」と「交流」サマーセミナー/電力の基礎知識(2)

ノートパソコンを買うと必ず付いてくるのが「ACアダプタ」という付属装置。これがなければ携帯性が高まるのに、そうはいかない。コンセントから来る電力は交流(AC)で、パソコンの中で使う電力は直流(DC)のために、アダプタで変換する必要がある。なぜそんな面倒な仕組みになっているのか。

» 2012年08月14日 10時13分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

セミナー1日目:電力を表す基本単位「kW」と「kWh」

 海外のロックミュージックが好きな人であれば、「AC/DC」というバンド名と、ACとDCの間に電流が走るロゴマークは、たぶんご存じだろう。演奏時の音量が大きいために、掃除機に付いていたAC/DCのマークがバンド名の由来になったとも言われている。

 最近の電気製品ではACやDCと書かれているものはアダプタを除けばあまり見かけなくなった。多くの電気製品が直流(DC=Direct Current)を使って動くので、わざわざ明記する必要がないからだろう。

 ただしオフィスでも家庭でも、コンセントから送られてくる電力は交流(AC=Alternating Current)である。ノートパソコンのようにアダプタが別になっているか、あるいは製品に内蔵されているかの違いがあるだけで、通常は交流から直流に変換した電力が製品の内部で使われている。

図1 太陽光発電システムに不可欠なパワーコンディショナの役割。出典:三菱電機

 一方、太陽光発電システムに欠かせないパワーコンディショナは、ACアダプタとは逆に、直流から交流に変換するための装置である(図1)。太陽電池が発電した電力は直流の状態になっている。これをオフィスや家庭の電力線を通してコンセントまで送るために交流に変えなくてはならない。

前進し続ける直流、変化に強い交流

 というわけで、日本だけではなく世界中の家庭やオフィスで直流と交流が入り乱れている。直流と交流の違いをごく簡単に説明すると、電力が同じ方向に一定の大きさで流れるのが直流で、周期的に大きさと方向が変わるのが交流である(図2)。一長一短があるために、用途に応じて両方が使い分けられている。

図2 直流と交流の違い。交流は電流と電圧の大きさが周期的に変動する

 それぞれの長所をひとつだけ挙げると、直流の電力は大きさを保ちやすく、逆に交流は大きさを変えやすい。大切な電力をロスなく使うためには直流が望ましいが、さまざまな大きさに変えて電力を使う必要がある場合には交流が適している。個々の電気製品は必要とする電力の大きさが違うため、各製品で共通に使うコンセントまでは交流にしておいて、それを電気製品ごとに大きさを変えてから直流にして効率よく消費する。

 このように電力の大きさを変えやすい交流の特徴は、発電所から家庭やオフィスに電力を供給するための送電・配電ネットワークでも大規模に利用されている。

セミナー3日目:電力の供給源になる「発電」と「蓄電」

セミナー4日目:電力ネットワークの役割は「送電」と「配電」

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