国内自動車メーカーが有利に、燃料電池車の世界基準で日本案が採用法制度・規制

2015年の燃料電池車立ち上げを前に、国際的な安全基準が固まった。6年間の議論を通じて、日本案が相当程度盛り込まれたという。これにより、国内の自動車メーカーが燃料電池車市場で有利になる。

» 2013年07月03日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 国土交通省は、2013年6月にスイスのジュネーブで開催された国連欧州経済委員会(UN/ECE)の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)第160回会合の結果を公開した。特に重要なのが、6年間にわたって議論が続いていた燃料電池車(FCV)の安全性に関する国際基準が成立したことだ。日本は2005年時点で各国に先駆けて基準を策定済みであり、これが相当程度国際基準に盛り込まれたという。

 国土交通省によれば、2015年以降に普及が進むと考えられている燃料電池自動車で国内の自動車メーカーの国際競争力が高まるという。例えば、既に開発済みの安全技術をそのまま使えることや、輸出先の地域に合わせて仕様を変える必要がなくなるといった強みを持つことになるからだ。

 統一基準には複数の基準がある。燃料電池車は水素を使うため、水素に関する安全基準が多い。主なものを図1に示した。

図1 燃料電池車の安全性に関する世界統一基準の概要。出典:国土交通省

 水素は空気と4〜75%の比率で混合したとき、爆発の可能性がある。そこで、水素が漏れたときにも濃度が4%を超えないようにする基準を設けた。燃料電池では水素をタンクに入れる際、大気圧の約700倍に相当する70MPaまで圧縮する。従って、水素が「満タン」になっている状態と空の状態ではタンクにかかる圧力の差が大きい。つまり、水素の出し入れによって、タンクが疲労する可能性がある。そこで、2万2000回の圧縮サイクルに耐える耐久性を求めた。これは1日1回注入したとしても、約60年間耐えられることに相当する。

 燃料電池車は通常のガソリン車と同様、衝突事故にあう可能性がある。そこで、車両衝突後60分間について、1分間当たり、水素が118NL(0℃、常圧時の体積、リットル)を超えないことも求めた。この他、高電圧の電気装置に直接接触できないよう、被覆するといった一般的な基準も設けている。

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