超小型電気自動車は街を変えるのか、ホンダが全国3カ所で実験を開始電気自動車

1人乗り、2人乗りの超小型電気自動車(超小型モビリティ)は長距離ドライブには向かない。大量輸送の役にも立たない。では何の役に立つのか。最初に採用された事例は都市部の配送サービスだ。だが、それ以外にも用途が大きく広がる可能性がある。ホンダは超小型モビリティを使った社会実験をさいたま市、熊本県、沖縄県宮古島市で始める。

» 2013年07月22日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 1人乗りや2人乗りの超小型電気自動車(超小型モビリティ)の導入が始まりつつある(図1)。先べんを付けたのは配送サービスでの利用だ。二輪車よりも多くの荷物を積むことができる上、電池で走行可能な距離の短さがデメリットにならない。静かで、運用コスト(燃料代)を抑えることができる。

図1 ホンダの超小型モビリティー「マイクロコミューター・プロトタイプ」。2012年11月に発表したもの。出典:ホンダ

 法律上の枠組みも変わりつつある。2013年1月には国土交通省が公道走行を可能とする認定制度を開始*1)、地方公共団体などでの試験導入を促す政策を進めている。これは安全性を維持しつつ、軽自動車に求められる保安基準を緩和する動きだ。

*1) 長さ、幅、高さ軽自動車の規格内にあり、定員2人以下(年少者を入れて3人以下)、出力8kW以下、高速道路などは運行できない。

 2012年6月末には「超小型モビリティ導入促進」事業の対象案件を発表、13件317台の支援対象を発表している。この事業では車両導入や事業計画立案、効果評価費などの2分の1を支援するというもの。地方自治体が超小型モビリティを導入して社会的な効果を確かめるという形のものが大半を占める。

 対象案件に含まれる超小型モビリティは、日産自動車のNew Mobility Conceptと、トヨタ車体のコムス、ホンダのマイクロコミューター・プロトタイプ(同プロトタイプβ)だ。以下ではホンダの社会実験について紹介する。

図2 社会実験の対象地域3カ所

 ホンダは地域特性が大きく異なる3つの地域、さいたま市、熊本県、沖縄県宮古島市、で2013年秋から社会実験を開始する(図2)。国土交通省の支援対象期間は2016年3月までであり、この期間内で実施する。

 3カ所の実験内容は異なる。さいたま市では11台を導入し、3つの取り組みを進める。さいたま市は人口120万人の大都市だ。従って都市部特有の移動に関する課題解決に役立つかどうかを調べる。例えば通勤や業務でカーシェアや、高齢者の近距離移動、子育て層などが対象だ。

 同社のマイクロコミューター・プロトタイプβは、同プロトタイプと同様、床下とリア(車台)にバッテリーやモーター、コントローラーなどを配置し、車体側のデザインを変更しやすい構造を採る。図3に示したように用途に応じた車体を用意しやすいという。

図3 同一プラットフォームを用途に応じて作り替える車体デザイン「Variable Design Platform」。出典:ホンダ

 2番目に家庭用蓄電池としての使い勝手を調べる。同社は「Hondaスマートホームシステム(HSHS)」の先行実証実験をさいたま市と共同で進めている。2011年に同市と協定を結んだ「E-KIZUNA Project」の1つだ。HSHSでは、ホンダのガスエンジンコージェネレーションユニットと給湯ユニットの他、ホンダソルテックのCIGS薄膜太陽電池モジュール、ホームバッテリーユニット(蓄電池)、制御洋のSmart e Mix Manager(SeMM)を実証実験棟に導入している。これを同社の交通情報サービス(カーナビ)である「インターナビ・リンク」や電動モビリティと接続するというものだ。3番目の取り組みは街作り自体に超小型モビリティを組み込むというもの。

 人口180万人の熊本県では、地域移動への適用の他、観光地として超小型モビリティに取り組む。環境エネルギー問題の改善に役立つ稼働かも調べる。

 人口5万5000人の宮古島市は、沖縄県の離島宮古島(面積160km2)など6つの島からなる。宮古島市は再生可能エネルギーへの取り組みに熱心だ。例えば、2013年7月には「宮古島市来間島再生可能エネルギー100%自活実証事業」を公募している。従ってホンダとの取り組みでもエネルギー問題の比重が大きい。

 宮古島は島であるため、最大走行距離は都市部と比較しても短い。離島での街づくりや環境事業と連携した超モビリティによるCO2排出量低減効果を検証する。もう1つは観光地における環境対策として、再生可能エネルギーで超小型モビリティを運用するCO2フリー化の検討を東芝とも共同で進める。東芝は2011年度から2014年度まで宮古島市における全島EMS(Energy Management System)実証事業を進めており、これとの連携を図る形だ。

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