太陽光の故障診断をその場で実現、シャープがソフトを開発自然エネルギー

太陽光発電システムは故障が目に見えにくい。これは保守要員にとっても同じことだ。シャープエンジニアリングは測定器と連携して、測定結果をスマートフォンに表示するソフトウェアを開発、診断から修理までに要する時間の短縮に役立つ。

» 2013年07月25日 10時00分 公開
[スマートジャパン]

 太陽電池は壊れにくい。これは太陽光発電システムが故障しないという意味ではない。システムのさまざまな部分に故障の可能性がある。太陽光発電システムは無音で動作する。可動部もない。従って表面上は動いているのか、止まっているのか、最大限の能力を発揮しているのか、それとも一部故障しているのか、分かりにくい。

 産業技術総合研究所によれば、故障のパターンはシステムの部分ごとに異なっている。太陽電池モジュールは納入後数年が経過してから故障の可能性が高まるという。パワーコンディショナの故障の傾向は太陽電池モジュールとは異なり、初期に多い。

 家庭にシステムを導入した場合、晴天時の最大出力が十分高まらないことから故障に気が付くことが多い。宅内に据え付けられたモニターの数値をある程度気に掛けていれば分かることだ。だが本当に故障しているのか、そうでないのかは検査してみなければ分からない。

 シャープによれば、従来の検査機器には課題がある。測定の正確性には問題がない。だが、測定結果をその場で目視する、評価するという点に改善の余地があった。メンテナンスを依頼してその場で故障していることが分かって修理を始めるか、それとも数日後に分かるか、これはユーザーの満足度に影響してくることだろう。

スマホと接続可能

 同社は、測定器(PVアナライザ)から測定データをAndroidが動作するスマートフォンやタブレット端末へ無線でデータを転送し、表示できるアプリケーションソフトウェアを開発し、無償で公開する。

 日本カーネルシステムのPVアナライザ製品との組み合わせで動作する。東京で開催された「PV Japan 2013」(2013年7月24〜26日)では、同社のPVアナライザ「Epsilon PVA12280」を利用したデモをシャープが展示した(図1)。

 図1ではデモのために内部が見えるようにしたパワーコンディショナに、図下にあるPVアナライザのプローブを当てている。

図1 パワーコンディショナとPVアナライザを接続したところ

 開発したのは家電製品のアフターサービスや法人、個人向けにソリューション事業を提供するシャープエンジニアリング。住宅用太陽光発電システムに対し、スマートフォンなどを使って現地で診断できるアプリケーションは業界初だと主張する。

 従来はPVアナライザの測定結果と、太陽光の強さを測定する日照計の測定結果をメンテナンス企業が事務所に持ち帰り、診断していた。今回開発した「PVアナライザ専用アプリケーション」をPVアナライザと一緒に使うと、日照計を利用する必要がなくなる他、測定したその場で発電状況を診断できる(図2)。

図2 測定から結果表示までの流れ

 アプリケーション内部にシャープの太陽電池モジュール製品の仕様がデータとして格納されているため、ユーザーが導入した製品の型番を入力するだけですぐに測定を開始できる(図3)。データは更新可能であり、新製品にも対応しやすいという。

 図3では、システムの出力電圧と出力電流をグラフ化した「I-Vカーブ」の例を示した。

図3 測定結果の模式図。出典:シャープ

 この他、スマートフォンなどが内蔵するGPSやカメラを使って、現場の位置や写真を測定データとともに保存し、長期的なメンテナンスに利用することも可能だ。

 なお、シャープエンジニアリングは、現場測定の他、ユーザーのシステムとシャープソーラーモニタリングセンターをインターネット性津属し、Webモニタリングシステムを利用してエラー情報を見守るサービスも提供している。ユーザー自ら対応できるエラーの場合は電話による連絡を行うという。

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