電力会社の送配電網を利用しやすく、接続料金は認可制に動き出す電力システム改革(3)

発送電分離が実現すると、電力会社の送配電網は新たに送配電を専門にする事業者に引き継がれる。数多くの発電事業者と小売事業者が同じ送配電網を使って安価な電力を供給できる体制が生まれる。そこで重要になるのが、送配電網を利用する際に事業者が支払う接続料金の決め方だ。

» 2013年10月24日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第2回:「再生可能エネルギーの制度も見直し」

 2018年にも実施する予定の「発送電分離」は、現在の電力会社を発電・送配電・小売の3つの事業部門に分割することを意味する。地域全体をカバーする送配電網を数多くの発電事業者と小売事業者が利用しやすくなって、閉鎖的な電力市場に競争をもたらすことが期待できる。

 現状でも電力会社の送配電網を使って事業者が電力を販売することは可能だ。ただし小売が自由化されている企業向けの「高圧」に限られている。今後は小売の全面自由化に伴って、家庭向けの「低圧」を含めて幅広く電力会社の送配電網を利用できるようになる。

 このような販売形態を可能にするのが「託送制度」と呼ばれるものである(図1)。発電事業者は電力会社から送配電網を借りて、小売事業者が契約した需要者まで電力を届ける。地域が異なる場合には、複数の電力会社の送配電網を経由することも可能だ。電力会社の役割は送配電網を提供するだけになり、将来の発送電分離を先取りした形と言える。

図1 「託送制度」のイメージ。出典:九州電力

 この託送制度にも見直しが必要になる。発電事業者が送配電網を利用する際に支払う接続料金の設定方法だ。現行の制度では、電力会社が届け出た単価で決まることになっている(図2)。通常の電気料金のように国の認可を受ける必要はない。

図2 電力会社の託送料金単価。低圧は資源エネルギー庁による試算値(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 発送電分離の後は、電力会社から独立した送配電事業者が単価を決めることになる。この送配電事業者は現在の電力会社のグループに入る。ほかに競争相手が存在しない送配電の分野で、不当に高い利用料を発電事業者から徴収することのないような制度に変更する必要がある。

 託送料金の算定根拠は通常の電気料金と同様に、原価をもとに一定の利益を上乗せした「総括原価方式」を採用している。しかも送配電に関係ない「電源開発促進税」や原子力発電にかかる「使用済燃料再処理等費」などを加えることができる(図3)。これらの原価は電力の需要家が公平に負担すべきものとの考えからだ。

図3 託送料金の原価構成(東京電力の場合)。出典:資源エネルギー庁

 こうした原価の積み上げが適正かどうかを含めて、送配電事業者による託送料金を届出制から認可制に変更することが検討されている。小売を全面的に自由化する一方で、電力のインフラを担う送配電の分野は規制を強化する方向に進んでいく。

第4回:「売り手と買い手を増やして電力を流通」

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