原子力発電が減少傾向にあるなか、水力発電の増加ペースが加速している(図6)。OECDに加盟する先進国のあいだでは横ばい状態だが、中国や南米を中心に新興国では発電量が年々伸びている状況だ。ブラジルでは国内の電力の80%以上、ベネズエラでも68%を水力発電に依存している(図7)。
水力による発電量は全世界で比較しても原子力の規模を上回る。2011年の時点で水力が3.6兆kWhの電力を供給したのに対して、原子力は2.6兆kWhと7割程度の規模にとどまった。全電力に占める割合では水力が16%、原子力が12%になる。
火力は全体の68%を占めていて、石炭が41%と最大である。天然ガスは22%、石油はわずか5%しかない。残る4%は太陽光や風力などの再生可能エネルギーだ。
こうしてIEAの統計データを比較してみると、火力を中心とした現在の日本の電源構成は世界全体の傾向に近いことがわかる。大きく違う点を挙げるとすれば、日本は石炭火力が少なくて、逆に石油火力が多いことである。
しかも全世界の生産量では、石炭が最近10年ほどのあいだに急増している一方、石油は微増の状態が続いている(図8、図9)。石炭は中国を筆頭に、インドやインドネシアなどアジア各国の生産量が拡大した。
天然ガスの生産量も石炭ほどではないものの、リーマンショック直後の2009年を除いて着実に増えている(図10)。特に米国とロシアの生産量が群を抜いていて、今後は日本への輸入拡大が見込まれる。
日本は天然ガスの輸入量で世界最大の国になった(石炭は第2位、石油は第3位)。米国とロシアの二強が世界市場で競争を繰り広げるなか、日本が買い手としてのスケールメリットを発揮して、従来よりも安い価格で天然ガスを調達できる可能性は大きい。
これから日本政府は3年間かけて、火力・原子力・水力を含む電源構成の将来像、いわゆるエネルギーのベストミックスを決めていく。その際には国内に閉じた狭い視点ではなく、世界のメガトレンドと調和させた国際的な戦略をとることが賢明と言える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.