「生協」が大規模風力に取り組む、秋田に7.5MW自然エネルギー

宮城県と岩手県、秋田県の生活協同組合が協力し、2015年、秋田県の沿岸部に風力発電所を立ち上げる。電力自由化後は各生協に直接売電する事業の構想もある。

» 2013年12月13日 13時40分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 秋田市(北側)と由利本荘市(南側)、発電所の位置

 宮城県と岩手県、秋田県の生活協同組合(生協)が手を取り、大規模な風力発電事業に乗り出す。出力7.5MWの風力発電所を秋田県の沿岸部の丘陵地帯に立ち上げる。

 「今回の事業の総投資額は約25億円であり、うち、8割を生協が出資する。組合員からの資金提供も募集したい」(みやぎ生協)。「近い将来に(政府が)計画している電力自由化後は、生協が直接個別の組合に売電する事業を立ち上げたい」(同生協)。

 みやぎ生協は再生可能エネルギーを重視した見解を2012年4月に発表している。「原子力発電所は全て廃止し、国は再生可能エネルギーを中心としたエネルギー政策に転換すべき」という内容だ。いわて生活協同組合も「原子力発電から撤退し、自然エネルギーを中心とした新たなエネルギー政策に転換すべき」という見解を2011年8月に発表している。今回はこれらの見解を直接実行する事業だ。

 風力発電事業では6者が協力する。みやぎ生活協同組合といわて生活協同組合、生活協同組合コープあきた、市民風力発電、ウェンティ・ジャパン、北都銀行だ。6者は2013年12月、秋田県で風力発電事業を共同実施することについて、基本合意書を締結。2014年1月末までに発電所を所有し、発電事業を行うコープ東北グリーンエネルギーを設立する。「系統連系などの準備を進めてきた市民風力電力の100%子会社であるグリーンエネルギー秋田に対し、6者が第三者割当増資を行い、社名をコープ東北グリーンエネルギーに変更する。出資比率は生協が80%となる」(同生協)。

 発電事業に対する生協の取り組みは全国的だ。以下の関連記事にあるように施設の屋根などを利用した太陽光発電が中心だが、風力発電所を立ち上げた前例もある。例えば、2013年3月には首都圏の4生協(生活クラブ神奈川、同東京、同千葉、同埼玉)が出資したグリーンファンド秋田が、由利本荘市の南に位置する秋田県にかほ市に出力2MWの風車1基を立ち上げている。東北地方の3生協の計画は、生協主導の風力発電にさらに弾みを付ける形だ。

出力2.5MWの風車を3基設置

 風力発電所の設置ではウェンティ・ジャパンと市民風力発電が協力してあたる。「秋田市と由利本荘市にまたがった沿岸付近に、出力2.5MWの風車を3基設置する」(ウェンティ・ジャパン)。秋田市側に2基、由利本荘市側に1基を立ち上げ2015年春に完成を予定する。「系統連系の枠があるため、出力抑制がかかり、合計出力は7.49MWとなる。年間予想発電量は1650万kWhであり、固定価格買取制度(FIT)を利用して全量を東北電力に売電する」(同社)。

 ウェンティ・ジャパンは市民風力発電が出資して、2012年に設立された企業であり、既に秋田県内に出力2MWの風車を2基設置した実績がある。「設立後の3年間で30基の風車を立ち上げる予定を公表している」(同社)。ただし、30基以上は東北電力の連携可能量を超えてしまう可能性があるため、東北地方以外でも可能性を探るという。

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