省エネ法が改正された。エネルギー需給のうち、需要側を改善するための改正だ。要点は2つ。断熱材にトップランナー制度を導入したことと、電力ピーク対策を需要家が進めやすいよう制度を変更したことだ。
「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)が改正された。「エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する等の法律」(改正省エネ法)だ。
2013年3月に法律案を閣議決定後、第183回通常国会における成立を経たもの。2013年12月27日には、経済産業省が法律に定めた措置を具体化するため、省令と告示を公布している。
改正省エネ法はエネルギー需給のうち、需要側を改善しようとするものだ。目的は2つある。まずは民生分門(業務・家庭)のエネルギー消費量の増加を抑えることだ。民生部門は産業部門に比較すると、省エネ対策が遅れている。もう1つは電力需要のピークを抑制することだ。
これらの目的を実現するため、法律では2つの措置を講じた。1つが「建築材料等に係わるトップランナー制度」、もう1つが「電力ピークの需要家側における対策(工場、輸送等)」である。
トップランナー制度は自動車の燃費を改善するための動機付けとして利用されている。同一の排気量であっても燃費はメーカーや製品ごとに異なる。ある時点で製品区分ごとに最もよい値を取り上げ、これを3〜10年先の将来の目標として国が定める。先頭を走る製品(トップランナー)を目標に据える制度だ。燃費が劣った車を淘汰しつつ、技術的に実現できる妥当な値を示すことができる(図1)。2013年時点では自動車やエアコン、テレビ受像機、照明器具、冷蔵庫、変圧器など26の特定機器に適用されていた。いずれもエネルギーを消費する機械・機器である。
改正省エネ法では、エネルギーを消費しない製品をトップランナー制度に加えた。具体的には建築用材料(窓、断熱材)である。これにより、民生部門における省エネが進む。
電力ピーク需要家側における対策とは何だろうか。工場などの需要家がこれまでの省エネ対策に加えて、蓄電池やエネルギー管理システム(BEMS、HEMS)、自家発電などを導入したとしよう。これまでの省エネ法が定めていた努力目標の算出方法ではこのような新しい取り組みは評価できない。
改正省エネ法について、経済産業省が公布した省令・告示*1)の概要は、大きく4つある。第1に省エネ法施行規則を2点改正した。事業者による電力ピーク対策を報告できるよう、定期報告書の様式を変更したことと、電気事業者が需要家の要求に応じて開示する情報を一定時間ごとの電気使用量と定めたことだ。
第2に「断熱材判断基準」を定めた。トップランナー制度の対象となる断熱材について、目標年度や目標基準値を明らかにした。図2の3種類の断熱材をトップランナーとして選び、目標年度(2022年4月1日〜2023年3月31日)において、図にある基準熱損失防止性能を上回らない(断熱効果が高い)ことを求めた。
第3は「工場等判断基準」の改正だ。前年度からの節電を大きく評価できるよう、エネルギー消費原単位*2)を追加した。第4は「工場等指針及び荷主指針」だ。電力ピーク対策が確実に進むよう事業者が取り組むべき措置の指針をまとめたものである。
*1) 「エネルギーの使用の合理化に関する法律施行規則等の一部を改正する省令(省エネ法施行規則の改正)」「断熱材の性能の向上に関する熱損失防止建築材料製造事業者等の判断の基準等(断熱材判断基準等)」「エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する等の法律の施行に伴う経済産業省関係告示の整備に関する告示(工場等判断基準等の改正)」「工場等における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針(工場等指針)」「荷主における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針(荷主指針)」。
*2) エネルギー消費原単位は、エネルギー管理の指標の1つ。「エネルギー使用量」÷「生産数量又は建物床面積その他エネルギー使用量と密接な関係を持つ値」で計算した値をいう。
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