再生可能エネルギーの2014年度の買取価格をめぐって、懸案になっている洋上風力の検討が具体的に進んできた。発電所の建設を検討中の事業者に対するヒアリングから、建設・運営コストが陸上の2倍以上になることが明らかになった。買取価格を30円台に引き上げる公算が大きい。
2012年7月に始まった固定価格買取制度で、最も安い買取価格が設定されたのは出力20kW以上の風力である(図1)。買取価格を決める基準は3つあって、発電設備の建設費、運転維持費、収益性(IRR=内部収益率)をもとに判断する。当初から太陽光の買取価格が割高との指摘があり、適正値をめぐる議論は現在も続いている。
買取価格は毎年度に見直すことになっていて、次の2014年度の焦点は洋上風力である。政府の研究会がまとめた検討結果を見ると、洋上風力の買取価格を陸上風力よりも高く設定する可能性が大きい。事業者に対するヒアリングの結果、建設費や運転維持費が陸上の2倍以上にのぼることが明らかになったからだ。
ヒアリングをもとに研究会が試算したところ、洋上風力は基礎部分の構造によって建設費(資本費)や運転維持費に大きな差が出た(図2)。構造が単純な円柱型の「モノパイル式」が最も安くて、建設費は1kWあたり60万円、運転維持費は年間で1kWあたり1万5000円である。それでも陸上風力の2倍になる。
一方で収益性を左右するのが設備利用率で、1kWの発電設備から実際に得られる電力量を示す指標である。国内では陸上風力が年平均風速を6メートル/秒として設備利用率を20%に、洋上風力は7メートル/秒を前提に30%が目安になっている(図3)。洋上風力のほうが1.5倍の発電量を見込むことができる。
以上の条件を総合すると、洋上風力の買取価格は以下のような計算式になる。
22円(陸上風力の買取価格)×2÷1.5=29円
ただし洋上風力の場合は波の影響などを含めて陸上よりも不安定な要素が多く、想定通りの発電量を得られないリスクは大きい。さらにモノパイル式は建設できる場所が限られるため、より複雑な構造が必要な場所ではコストが大きくふくらむ。
日本のエネルギー政策として洋上風力を拡大するのであれば、買取価格を30円台に引き上げることが望ましい。政府は洋上風力の買取価格を新設するかどうかを含めて、3月末までに決定する。
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