緊急設置の石油火力発電所、ガスコンバインド方式で出力5割アップ電力供給サービス

2011年3月の東日本大震災による電力不足を解消するため、青森県に緊急で設置した火力発電設備がある。「八戸火力発電所5号機」で、石油を燃料に27万kWの供給力を発揮してきた。新たに最先端のコンバインドサイクル方式に更新して、42万kWのガス火力発電設備に生まれ変わる。

» 2014年03月05日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 現在の「八戸火力発電所5号機」の建設工事が始まったのは、東日本大震災から4カ月後の2011年7月のことで、それから1年後の2012年7月に27万kWの出力で営業運転を開始した(図1)。東北電力が震災後に設置した5基の緊急電源のうちの1つである。

図1 「八戸火力発電所5号機」の現在の外観。出典:東北電力

 軽油を燃料にガスタービンを回転させる「シンプルサイクル方式」を採用して稼働を急いだ。その設備を発電効率の高い「コンバインドサイクル方式」に拡張することは当初からの計画だった。ガスタービンからの熱を使って蒸気タービンでも発電する方法により、出力を39万kWへ増強することができる。新設備は2014年3月1日に試運転を開始して、8月から営業運転に入る(図2)。

図2 「八戸火力発電所5号機」の設備構成。出典:東北電力

 次のステップでは燃料を軽油からLNG(液化天然ガス)に切り替えて、出力を42万kWまで高める。火力の熱エネルギーを電力に変換できる効率で比較すると、現在の33%から55%へ大幅に改善する。軽油よりも価格の安いLNGを利用できるうえに発電量が増えて、燃料費の削減につながる。CO2排出量を軽減できるメリットも大きい。

 すでに燃料をLNGに転換するための工事は進んでいる。2015年4月に試運転を開始して、7月には営業運転に移行する予定だ。当初の軽油によるシンプルサイクル方式から3年でガスコンバインドサイクル方式に転換を完了する(図3)。

図3 「八戸火力発電所5号機」の設備更新計画。出典:東北電力

 東北電力は1984年に日本で最初のガスコンバインドサイクル方式を「東新潟火力発電所」に導入したパイオニアでもある。現在のところ関連会社を含めて主な火力発電所は11カ所にあるが(図4)、そのうち東新潟と「仙台火力発電所」にガスコンバインドサイクル方式を導入している。さらに八戸の新設備に加えて、「新仙台火力発電所」でも2017年の営業運転に向けてガスコンバインドサイクル方式に更新中だ。

 電力各社が巨額の赤字を出し続けている状況にあって、東北電力は2013年度に350億円の経常利益を上げるまでに業績が回復する。その要因の1つとして「高効率火力発電所の稼働増による燃料費の減少」を挙げている。

図4 東北電力の主な発電所(2013年1月29日現在)。出典:東北電力

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