新開発の下水処理技術を最初に導入するのは、東京の中心部の下水を処理する「芝浦水再生センター」になる(図1)。このセンターはオフィスビルや商業施設が集中する千代田区や新宿区などの下水を一括して処理する設備で、処理した後の水は東京湾へ放流している。
東京湾の水質を改善するために「魚が住める水質」を基準にして、通常よりも高度な処理法を採用してきた。下水には窒素やリンが多く含まれていて、海中のプランクトンなどを過剰に繁殖させてしまう可能性があるためだ。
従来の高度処理法は通常の方法と比べて窒素を35%、リンを60%減らすことができる反面、電力の使用量が30%増えてしまう点が課題になっていた。新開発の高度処理技術を適用すると、窒素とリンの除去効果を維持したまま、電力の使用量を23%以上も削減することができる(図2)。
下水の処理は微生物を使って「硝化」と「脱窒」の2つのプロセスを実施する。硝化には十分な酸素が必要になる一方、脱窒は無酸素状態を作らなくてはならない。従来の高度処理法では2つの槽に分けて処理するために、循環ポンプと撹拌(かくはん)機を使って下水を送り込んでいた(図3)。
新たに開発した高度処理法は酸素の送風量を制御することによって、1つの槽の中で硝化と脱窒の両方を同時に実行できる。電力使用量の多い循環ポンプと撹拌機が不要になり、従来と比べて2割以上の節電効果をもたらす。
この高度処理法は既存の施設を改造して適用できることから、東京都の下水道局は2014年度中に芝浦水再生センターに導入する計画だ。特許も申請中で、今後は国と連携した展開を図る。
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