ガスも小売全面自由化へ、電力に続いて2020年までに法制度・規制(1/2 ページ)

電力の代替エネルギーとして重要度が高まるガスの市場でも、小売を全面的に自由化する動きが進んできた。現在のところ電力と同様に家庭向けの小売だけは規制の対象になっているが、政府は電力に続いてガスの市場も開放する方針だ。電力会社とガス会社の自由競争が2020年までに始まる。

» 2014年03月12日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 国のエネルギー政策の基本方針を検討する機関として「総合エネルギー調査会」がある。その中に「電力システム改革小委員会」と並んで「ガスシステム改革小委員会」が2013年11月に設置された。我が国のエネルギー供給において電力とともに重要な役割を担うガスの市場を改革して、よりいっそう安価で安定したガスの供給体制を構築することが目的になっている。

 その第6回の委員会(2014年3月11日)において、ガスの小売全面自由化を実現する新制度の設計に着手することが決まった。電力と同様に規制の対象になっている家庭向けの市場を自由化するのと同時に、ガス事業者の区分や制約を簡素化して新規参入を促す方針だ。

新規参入者のシェアは早くも15%を突破

 企業や家庭で使うガスは「都市ガス」と「LP(液化石油)ガス」の2種類があって、国内の販売量の約8割を都市ガスが占めている。これまで家庭向けの小売事業が規制されてきたのも都市ガスである。

 都市ガスの販売量は工業用を中心に2007年まで増加を続けて、その後は景気の低迷で一時的に減少したものの、2010年から再び増加傾向に転じた(図1)。特に東日本大震災が発生して以降、電力の代替エネルギーとして企業と家庭の双方で利用者が拡大している。

図1 都市ガスの販売量。出典:資源エネルギー庁(日本ガス協会のデータをもとに作成)

 都市ガスは電力と同様に、大口の顧客から段階的に小売の自由化が進んできた。自由化が始まったのは電力よりも5年早い1995年(平成7年)からで、2007年(平成19年)までに家庭向けを除く小売事業の規制が撤廃された(図2)。

図2 ガス小売自由化の進展(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 この間に新規参入の動きが活発に進んで、従来のガス事業者と激しい競争を展開している。新規参入者のシェアは2007年度に早くも10%を超えて、さらに2010年度には15%を超える水準まで上昇した(図3)。

図3 小売自由化領域の新規参入者数と供給量シェア(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 2012年度末の時点で新規参入者は34社が登録されている。そのうち13社は電力会社を中心とする電気事業者で、新規参入者の中でも大きなシェアを獲得している。実際のところガスの小売自由化を推進するうえで、電力会社が果たしてきた役割は大きい。

 電力会社は火力発電用にLNG(液化天然ガス)を大量に調達する必要があるために、スケールメリットを生かしてガスを安価に販売することができる。今後は家庭を含めて小売が全面自由化になれば、電力とガスを組み合わせた新しいサービスで攻勢をかけることが可能になる。

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