水素供給の形が見えてきた、3社の設備の違いとは電気自動車(1/2 ページ)

2015年の燃料電池車発売に向けて、水素ステーションの新設が相次いでいる。2014年4月に補助金の認定を受けた3社の設備の特徴を紹介する。東邦ガス、大阪ガス、岩谷産業だ。

» 2014年04月09日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 水素を「燃料」として走行する燃料電池車の市販が始まるのは、2015年だ。残された時間は1年程度。水素インフラ拡充が急務となってきた。しかし、水素を車に注入できる水素ステーションの整備(建設)コストは、5〜6億円。1億円で済むガソリンスタンドと比べるといかにも高コストだ。2013年夏時点で水素ステーションの数は17カ所にとどまっている*1)

 2011年には自動車メーカー3社とエネルギー事業者10社が共同で「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明」を発表。2015年までに100カ所程度の水素ステーションの先行整備を進めるとしていた。これでは間に合わない。

 そこで経済産業省は水素供給設備整備事業費補助金を2013年度に開始した。補助金の実務を担当する補助事業者として選ばれた次世代自動車振興センターによれば、2013年度は19件に交付されている。岩谷産業(4件)、岩谷ガス(1件)、JX日鉱日石エネルギー(10件)、東京ガス(2件)、豊通エア・リキードハイドロジェンエナジー(2件)だ。供給能力は全て1時間当たり300Nm3以上である*2)

 水素ステーションは2種類に分類できる。構内で原料から水素を作り出すオンサイト式と、水素を外部から持ち込んで供給するオフサイト式だ。2013年度の補助金案件は、オンサイトが2件(東京ガス1件とJX日鉱日石エネルギー1件)、オフサイトが17件だった*3)

 2014年度も補助金を交付する。水素ステーションの建設に必要な費用について最大、半額を補助する形だ。上限は中規模の設備の場合、2億5000万円(オンサイト方式の場合)、または1億9000万円(オフサイト方式の場合)。

 2014年4月2日には第1次交付結果(燃料電池自動車用水素供給設備設置補助事業)を発表。選ばれたのは東邦ガスが1件、大阪ガスが1件、岩谷産業が4件だ。それぞれの案件の特徴は何だろうか。

*1) 2002年に開始された世界初の水素ステーション実証試験であるJHFCプロジェクトが発端となった。
*2) 気体は温度や圧力によって体積が変わる。そこで、温度0度、1気圧の場合の体積を「Nm3」で表す。
*3) 地域別では千葉県(1件)、埼玉県(5県)、東京都(3件)、神奈川県(2件)、愛知県(6件)、兵庫県(1件)、福岡県(1件)。

設備を集約する東邦ガス

 東海3県に都市ガスを供給する東邦ガスは、既に10年以上、水素ステーションを動かしている。2002年に同社の技術研究所内に設置しており、その後、愛・地球博(愛知万博)や中部国際空港、とよたエコフルタウンで実証事業を重ねてきた。現在、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業として3カ所で実証事業を続けている(図1)。

図1 東邦ガスの既設水素ステーションの配置 出典:東邦ガス

 同社は2015年度までに2カ所を増設して5カ所とする計画を2014年3月28日に発表している。2カ所のうちの1つが、同社初の商用水素ステーション「日進水素ステーション(仮称)」。着工は2014年5月、2015年上半期に開業する予定だ(図2)。

図2 日進水素ステーション(仮称)の設置予定地 出典:東邦ガス

 同水素ステーションの特徴は、ガソリン、天然ガス、LPガスと同じ場所で水素を充填できることだ。充填機(ディスペンサー)をこのように配置する事例として日本初だという。「設置スペースを削減できることが特徴だ」(東邦ガス)。既に運用中の日進エコ・ステーション(愛知県日進市梅森町)に水素充填機などを配置することで実現する(図3)。

図3 ステーション内のディスペンサーの配置 出典:東邦ガス

 日進水素ステーションでは、同社としては初めてオフサイト式を採用する。水素供給能力は1時間当たり300Nm3であり、70MPa(パスカル)で水素を供給できる。70MPaという圧力値は国内で燃料電池車の発売を予定する自動車メーカーの仕様と合致している。

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