水素供給の形が見えてきた、3社の設備の違いとは電気自動車(2/2 ページ)

» 2014年04月09日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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水素製造設備を強調する大阪ガス

 大阪ガスは2001年から水素ステーションの実証事業を始めている。日本初の水素ステーションを大阪市此花区に建設しており、2007年からは大阪市中央区に商用水素ステーションを運用してきた。現在は此花区の施設だけを動かしている。

 補助金を受けて今回新設するのは「北大阪水素ステーション(仮称)」。大阪府茨木市に立ち上げる。2014年秋に着工を予定しており、2015年春に運営を開始する予定だ。

 同社は2013年10月に水素発生装置「HYSERVE-300」を発売している(図4)。300とは発生能力が1時間当たり300Nm3であるという意味。「発生能力が100Nm3である機種を先行して商品化しており、既に導入事例もある」(大阪ガス)。100Nm3の機種を3台設置する場合と比較すると、設置面積を約42%削減、設備コストを約50%削減できるという。

 今回の北大阪水素ステーションではこのHYSERVE-300を設置し、都市ガスを改質してステーション内で水素を製造する*4)。すなわちオンサイト式を採る。充填圧力は70MPa、充填速度は燃料電池車1台当たり3分だ。

*4) 「都市ガスを改質して供給する方式を採るのは当社ともう1社だけだ」(大阪ガス)。

図4 HYSERVE-300の外観。寸法は幅7.5m×奥行き3.0m×高さ3.3m 出典:大阪ガス

 大阪ガスは同ステーションを「マザーステーション」と位置付ける。マザーステーションとは、水素発生装置を備えていないオフサイト式のステーション(ドーターステーション)に水素を出荷できるという意味だ。ドーターステーションに水素を供給することで、水素発生装置の稼働率を高めることができ、運用コスト低減に役立つという。

 なお、同ステーションは既存の天然ガススタンドと併設する。このような方式は関西では初だという。

岩谷産業は液体水素や移動式で

 岩谷産業は新設する水素ステーションの詳細を公表していないものの、東邦ガスや大阪ガスとはかなり性格が異なるステーションとなる。山梨県甲府市と大阪府泉佐野市、山口県周南市に設置する3つのステーションの仕様はよく似ている。いずれも1時間当たり300Nm3の供給能力を備え、オフサイト方式だ。特徴的なのは液化水素に対応する設備を備えていること。同社は液体水素の供給が可能な日本初のステーション「JHFC有明水素ステーション」を昭和シェル石油と共同で2003年に東京都江東区で立ち上げている。

 自動車大手3社は液体水素の供給を受けて走行する燃料電池車の発売を予定していない。岩谷産業は水素ステーションを燃料電池車以外の用途にも利用できるように設計していることが分かる。

 残る1案件は福岡県中央区で運用する。規模は100Nm3以上、300Nm3未満と小規模だが、移動式という特徴を備える。

【訂正】 記事の掲載当初、東邦ガスの水素ステーションを「日新水素ステーション(仮称)」としておりましたが、これは「日進ガスステーション(仮称)」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。

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