燃料電池車が非常時に博物館へ電力を、ホンダが北九州で電気自動車

燃料電池車は車内に内蔵できるエネルギーの量が電気自動車と比べて数倍多い。このため、電力を外部に供給する「電源車」としても有望だ。ホンダは北九州市と協力して、市内の博物館へ非常用電力を送る実証実験を開始した。

» 2014年02月19日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 「非常時に公共施設へ電力を送り届ける」、ホンダが北九州市で2014年2月から始めた実証実験の目的はこれだ。北九州市の北九州スマートコミュニティ創造事業における共同実証実験である。今後、約1年間実験を重ねる。

図1 燃料電池車「FCXクラリティ」を利用した非常用電力の供給実験の様子 出典:ホンダ

 ホンダは2015年の発売を目指して量産型燃料電池車の開発を急いでいる。実証実験に利用するのは2008年に開発した「FCXクラリティ」(図1)。官公庁や一部法人にリース販売中の車種だ。FCXクラリティは水素タンクと出力100kWの燃料電池を搭載しており、走行用モーターに送る電力を車内で発電している。10・15モードで連続620km走行可能だ。

 FCXクラリティは水素を充填して走行する。このため、充電用の設備は搭載していない。そこで、建物と接続するために可搬式インバーターボックスを用いる。トランク内部に設置する装置だ(図2)。「当社は燃料電池車から家庭に電力を供給するV2H(Vehicle to Home)の実験を継続中だ(関連記事)。V2Hの実験では電力のピークカットを目的としており、インバーターボックスは100V出力である。公共施設用では用途も異なるため、100Vと200Vのどちらも給電できるように改良した」(ホンダ)。同社は非常用給電をV2L(Vehicle to Load)と呼んでいる。

図2 可搬式インバーターボックスを車外と接続したところ(クリックで拡大) 出典:ホンダ

 電力を受け取るのは北九州市立いのちのたび博物館(八幡東区東田)。博物館側に設置された出力10kWの蓄電装置に対し、蓄電池の容量が減るごとに少しずつ給電する。「FCXクラリティからは最大9kW(連続7時間)の電力を送ることができるものの、一気に満充電するような使い方は想定していない」(ホンダ)。

 10kWhの蓄電装置は古河電池が開発したもの。同社は富士電機、古河電気工業との共同実証実験のために、いのちのたび博物館に3種類の電池を設置済みだ。出力100kWと10kWの次世代鉛蓄電池「UltraBattery」、同10kWのリチウムイオン蓄電池である。次世代鉛蓄電池は、鉛負極と並列にキャパシタ電極を組み合わせた蓄電池。従来の鉛蓄電池よりも2〜3倍の寿命を実現し、最終的には10年間利用できることを開発目標としている。

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