家庭に6日分の電力を供給、ホンダの燃料電池車スマートホーム

燃料電池車(FCV)は内蔵エネルギーが大きい。このため、電源車としての用途や、家庭に電力を送るV2H用途に向いている。ホンダは北九州市にFCV「FCXクラテリィ」を提供、FCVを利用した実証実験が始まる。

» 2013年04月11日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 燃料電池車(FCV)は電気自動車(EV)と比較して利用可能な電力量が大きい。圧縮水素の形で燃料を搭載しているからだ。走行距離が長いことはもちろん、非常用の電源車として使ったり、家屋と接続して電力を供給(V2H)したりする用途にも適している。

 ホンダは北九州市と協力してV2Hに取り組む。2008年にリース販売を開始した燃料電池車「FCXクラテリィ」に、家屋へ電力を供給するための直流交流変換装置を取り付け、北九州市に納車した(図1)。FCXクラリティが供給可能な電力量は60kWh。これは一般家庭の6日分に相当する。最大出力は9kWあり、一般家庭で利用する電力の上限を大きく超えている。

図1 FCXクラリティによるV2H。出典:ホンダ

 北九州市は経済産業省が募集した「次世代エネルギー・社会システム実証」の実証4地域に選ばれており、「北九州スマートコミュニティ創造事業」を2010〜2014年度の5年間で実施中だ。八幡東区東田地区(約120ha)で38事業を展開する。市内標準街区と比較して、2014年までにCO2排出量を2005年比50%減にすることが目標だ。

 FCXクラリティを用いた実証実験では主に3つのテーマを扱う。まず、北九州市環境ミュージアム(八幡東区東田)の敷地内にある北九州エコハウスにFCXクラリティから電力を供給する(図2)。電力平準化によって電力ピークカットに貢献する。

図2 スマートハウスと接続する。出典:ホンダ

 次に、地域と連携したCEMS(Community Energy Management System)ネットワークに電力を供給する。八幡東区東田地区の地域節電所にて、地域全体のエネルギーマネジメントにおけるV2Hの効果を検証する*1)。地域節電所は地域内の家庭やオフィスの電力需要を予測・監視する施設。同時に再生可能エネルギーによる発電量を予測・監視することで、地域の電力系統の需給バランスを調整する。

*1) FCXクラリティの水素残量を直接CEMSに自動送信する仕組みは今回、設けていない。停車中、給電を開始する際に、タブレット端末から貯蔵量を送信する。

 3番目のテーマはFCVを利用したより一般的な実験だ。実証実験車としてさまざまな状況で活用する。実際の都市環境下でCO2削減効果を検証する他、緊急時における移動可能な発電設備としての実用性も調べる。

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