パナソニックはシリコンを利用するHIT太陽電池セルにおいて、変換効率が初めて25%を超えたと発表した。25%を突破したシリコン系太陽電池の記録は15年ぶりである。従来のセル構造を一新することで実現した。
太陽電池の技術開発競争が続いている。パナソニックは2014年4月10日、シリコン系太陽電池である「HIT太陽電池」において、変換効率25.6%を達成したと発表。「社内の技術者はこれまで25%に壁があると主張していた。その壁を乗り越えたことに意義がある。今後の改善はかなり難しくなるものの、変換効率向上のための研究開発を継続する」(パナソニック)*1)。同社のこれまでの記録は2013年2月に発表した24.7%。これを0.9ポイント改善した形だ。
太陽電池は大面積になるほど高い変換効率へ到達しにくい。従来の24.7%の記録は同社が実用サイズと主張する100cm2(10cm角)を超えた101.8cm2で実現したもの。今回の新記録ではさらに広く、143.7cm2である(図1)*2)。
*1) 小面積セルを含めると、シリコン系ではオーストラリアのニューサウスウェールズ大学の研究チームが1999年3月に達成した25.0%(単結晶シリコン、セル面積4cm2)という記録がある。
*2) 実際に試作したセルの面積はこの数字よりも大きい。143.7cm2という面積は、マスクを掛けたのちの開口部の面積だ。なお、今回の測定は産業技術総合研究所(AIST)が実施した。
25.6%という変換効率は各種の方式の太陽電池の中にあって、どのような位置を占めるのだろうか。米NREL(国立再生可能エネルギー研究所)が2014年3月19日に発表した各種変換効率の記録から、1998年以降のものを図2に抜き出した。
記録には複数の発電層を備える方式やGaAs(ガリウムヒ素)など、小型セルで高効率な太陽電池(紫色)なども示されている。これらは屋根置き用途やメガソーラー用途というよりも、人工衛星に搭載したり、レンズや鏡で光を集めて発電するシステム向けの太陽電池だ。
図2では結晶シリコン系(青色)と薄膜系(緑色)を主に示した。27.6%とあるものは、単結晶シリコン太陽電池に光を集めたもの(集光型)。25.0%がニューサウスウェールズ大学(UNSW)の小面積セルの記録、24.7%が従来のHITだ。その下にシリコンを使わない集光型のCIGS、通常のCIGS、CdTeと並び、シリコン多結晶(20.4%)と薄膜シリコン(20.1%)が続く。
以上から、屋根置き用途などで使う太陽電池ではこれまでもHITがトップの位置にあり、さらに前進したことが分かる。シリコン系ではHITと薄膜シリコン以外は近年の記録更新がなく、変換効率の伸びが止まっていることも図2から読み取ることができる。
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