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» 2014年04月11日 10時40分 公開

自然エネルギー:15年で壁を超えた、効率25.6%のHIT太陽電池 (3/3)

[畑陽一郎,スマートジャパン]
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セルの構造自体を変えた

 技術(2)は、HIT太陽電池の構造そのものを変えることで実現した。新構造を図4に示す。電力を生み出す方式自体は変わっていないが、表面(上面)に電極がない。全て裏面に集めた(バックコンタクト型)。表面に電極があると、電極部分に当たった光は発電に寄与しない。太陽電池が生み出す電子の数が減る(電流が減る)。変換効率が24.7%のセルでは取り出し可能な最大の電流の密度(短絡電流密度)*3)が39.5mA/cm2だったが、これを41.8mA/cm2に改善できた。

*3)太陽電池の性能は開放電圧(Voc)、短絡電流(Isc)、曲線因子(FF)で示すことができる。開放電圧は、太陽電池セルから取り出すことが可能な最大の電圧。今回の新型セルでの開放電圧は0.74Vであり、24.7%のセルと比較して0.01V下がっている。しかし取り出すことができる最大の電流(短絡電流)が4.02Aから6.01Aへ増えたため、変換効率が向上した。

 図4にある青い色の部分は光の干渉を利用した反射防止膜であり、パッシベーション層とは、電子とホールの再結合を防ぐシリコンウエハー表面の不活性膜である。単結晶シリコン部分は変わらない。「Cz」は単結晶シリコンを製造する方法(チョクラルスキー法)を示し、「Textured」とは、シリコンの表面にごく微細な凹凸構造を作って、光の反射方向を変え、シリコン内部に取り込む光の量を増やす工夫だ。反射防止膜やTexturedはごく一般的な技術である。裏面電極構造自体は、他社の単結晶シリコン太陽電池などで採用が珍しくない。

図4 開発した太陽電池セルの構造 出典:パナソニック

 技術(3)は、技術(2)から生み出されたものだ。太陽電池セルに表面電極を使う場合、電極(電線)の影を減らすために、電線の太さをなるべく細くしたい。電線の材料を変えないまま細くすると、必ず電気抵抗が増える。すると、太陽電池が生み出した電力が無駄になってしまう。電極が太すぎても細すぎても電力が減ってしまう。最適化が難しい(図5)。今回の新構造では電極を裏面に置くことで、十分な太さを確保でき、電気抵抗を減らすことができた。

図5 従来の太陽電池セルの外観。図1とは異なり、表面電極が写っている 出典:パナソニック

製品化に課題か

 新型HIT太陽電池セルがどのようにして、変換効率を高めたのか解説した。ユーザーにとってはどの程度の性能の新型製品がいつごろ入手できるのか、関心があるだろう。

 従来のHIT太陽電池のうち、最も性能が高い製品の変換効率は22.0%だ。「22.0%という数字は、セル変換効率24.7%の技術を全て取り込んだものではない」(パナソニック)。以上から考えると、今回の技術を適用した場合、23%程度の製品の開発が可能になると推測できる。

 製品化時期の予測は難しい。「これまでのHIT太陽電池とは構造が大きく異なる。生産ラインに手を入れる必要があり、量産コストを下げる手法も変わってくる。HIT太陽電池の変換効率は最高だが、コストも最高のままではユーザーに受け入れてもらうことは難しい」(パナソニック)。量産技術の開発にも注力しなければならないということだ。

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