変換効率20%に迫る太陽電池、発電コストの低下が加速蓄電・発電機器

太陽電池の進化によって光のエネルギーを電力に変換する効率が上がれば、面積あたりの発電量を増やすことができる。現在のところ15%前後の変換効率を20%まで高める開発競争が繰り広げられている。京セラは高効率の太陽電池2種類を開発して4月から順次投入していく計画だ。

» 2014年02月26日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 太陽電池は素材によって「シリコン系」「化合物系」「有機系」の3種類に分かれる。このうち国内ではシリコン系が最も多く、製造方法によって「単結晶」「多結晶」「薄膜」の3タイプがある。

 変換効率が最も高いのは単結晶で、現時点では20%程度が最高水準だ。これに対して多結晶は製造コストが安くて、変換効率は15%前後になる。薄膜タイプの太陽電池は最も安く作れる代わりに、変換効率が10%程度にとどまる。住宅用・非住宅用ともに、単結晶と多結晶の2タイプが現在の主流になっている。

 京セラは単結晶と多結晶の両方で、変換効率を高めた新製品を相次いで投入する。これまで京セラの太陽電池は多結晶タイプしかなく、2012年に発売した現在の製品の変換効率は17.8%である。新製品は結晶の品質を向上させることなどによって18.6%まで効率を高めた(図1)。

図1 多結晶シリコン太陽電池セル(左)と変換効率(右)。出典:京セラ

 ただし太陽電池は「セル」と呼ぶ単体の変換効率と、セルを何枚も並べてパネル状の製品にした「モジュール」の変換効率では数値が変わる。京セラは多結晶タイプの新製品に関してはセルの変換効率しか公表しておらず、モジュールの状態では少し低くなるとみられる。モジュールにした製品は2014年の夏に発売する予定だ。

 一方の単結晶タイプの新製品はセルの変換効率が19.0%まで上がって、多結晶タイプを上回る。モジュールにすると48枚のセルの構成で15.5%になる(図2)。多結晶タイプよりもモジュール1枚あたりの発電量が大きく、住宅の屋根のように設置面積が狭い用途に向いている。京セラにとっては初めての単結晶タイプの製品で、4月から販売を開始する。

図2 単結晶シリコン太陽電池モジュール(左)とセル(右)。出典:京セラ

 さらに京セラは単結晶タイプの変換効率をセルのレベルで22.0%まで高める計画を進める。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が策定した太陽光発電のロードマップでは、2020年までにセルで25%、モジュールで20%の変換効率を実現することが目標になっている。すでに研究レベルではシャープが30%を超える太陽電池セルを開発済みだ。

 各メーカーの開発競争によって、ロードマップの目標を前倒しで達成できる可能性が大きくなってきた。2020年の目標を達成した時点では、量産効果と合わせて電力1kWhあたりの発電コストが14円程度まで下がり、現時点の石油火力の水準になる。

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